ビューポイント No.2025-030 労働市場を巡る論点と 2026 春闘の課題~「強い経済」に向けて賃金・現場力の底上げを~ 2026年01月16日 山田久大企業では賃上げの動きが定着しつつあるが、中小企業では企業によって好不調二極化の様相。中小企業の賃上げは販売価格の引き上げ度合いの影響を大きく受けており、コスト上昇分の価格転嫁を進めることが重要課題。労働分配率の規模別格差を踏まえれば、大企業が積極的に価格転嫁を受け入れ、大企業から中小企業に付加価値を移転することで、中小企業の賃上げ原資を確保することが必要。わが国全体でみると、名目賃金はプラス基調に転じているが、インフレ率が落ち着かず、実質賃金のプラス基調が定着するかはなお不透明。物価上昇の主因は食料品で、その底流には構造的な要因があり、エンゲル係数の高い低所得層ほど生活が苦しい状況が続く。それは最低賃金の高めの引き上げの必要性を意味するが、それに加えて、食料自給率の引き上げなど「経済安全保障」政策の遂行が、実質賃金プラス転化の条件としても重要であることを物語る。わが国では人手不足が深刻化するなかで生産性向上が見られないが、それは労働時間制約が臨界点に達していることを意味。人口動態からみて、生活上の理由や体力的に長時間労働ができない人が多数派の社会に変わっていることが背景にあり、こうした状況下で残業上限の緩和は人手不足対策にはならず。DXの遅れなど事業構造の転換が時代の要請に追い付かず、稀少になった人材が低生産性部門に滞留。結果として、既存低生産性部門の存置が資本ストックの余剰を生み、成長分野の人材不足を招来。強い経済の実現を目指すには、単に資本ストックを増やす投資をするだけでは不十分であり、人材不足への対応にフォーカスを当てた政策こそが肝。結論として、①5%程度の賃上げの継続、②賃上げの裾野拡大、③「現場発DX」の推進、の3つの方向性が重要であることを政労使で共有し、短期的な対立を超え、長期的な視点から労使の共存共栄を追求していくことが、わが国経済を新たなステージに導く道。そうした認識に立った「労使政共創」の取り組みが、2026 年春季労使交渉を機にスタートすることを期待。(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)