Economist Column No.2025-067
米国のベネズエラ攻撃と米国国家戦略NSSから考える日本経済の今後
2026年01月05日 石川智久
■米国のベネズエラ攻撃は米国NSSの流れに沿ったもの
日本の今後を考えるうえで、超大国である米国の動向は非常に重要である。その際、大きな材料ともいえるのが、昨年12月に公表された米国の国家安全保障戦略(National Security Strategy: NSS)である。そこでは、モンロー・ドクトリンに通じるトランプの系論(The Trump Corollary to the Monroe Doctrine)という表現で、南米を含む西半球への安定と安全保障に米国が注力する姿勢を示した。まさに米国第一主義を示した形であるが、その米国に南米も含まれるようになったことが特徴的である。年初に米国はベネズエラに対して、大規模攻撃と大統領拘束を行ったが、このNSSの記載をみれば、今回の行動はその戦略の流れにあることがわかる。
インド太平洋については、西半球に次ぐ優先地域としており、「この地域において競争に勝たなければならない」という意思を強調した。こうしたなか、台湾については現状変更を支持しない姿勢も示している。一方で、欧州については相対的にページ数も少なく、自立を促すような記載となっている。また、中東とアフリカの記載はさらに少ないうえ、非常にビジネスライクな記載となっており、これらの地域で米国は存在感をさらに低下させていくとみられる。また、全体的に国民国家重視であり、国際機関を敵視するような記載も多く、米国は今年も国際機関から距離を置くとみられ、国際機関の存在感も低下していく恐れがある。
■日本は何をすべきか
さて、わが国はこれを踏まえて何をすべきであろうか。一つは、米国と連携した形で南米との関係強化を図ることであろう。NSS等においては、南米アメリカ大陸を魅力的な市場にする方針が示されている。これは南米市場へのビジネスチャンスが拡大する可能性を示唆している。もっとも、米国としては安全保障面と自国の利益に強く言及していることから、米国といかに連携していくかが課題になるといえよう。また、国際法や南米諸国の国民感情等に留意しながら対応を進めていくべきである。
アジアについても基本的に既存の政策を変更しない点は安心材料であるものの、日本に対して防衛費増額等を求めている。日本としては、現在政権が進めている防衛面の努力を米国に丁寧に説明していくことが重要である。
そして上述のように米国は、欧州、中東、アフリカ、国際機関に対する関与を減らしていく可能性が高いが、こうした国や機関はこうした状況を踏まえて、日本と関係強化を求めてくると考えられる。そこでは、安易な米国追従に流れることなく、日本としてwin-winの関係を築ける国・機関と友好的な関係を構築し存在感を高めるチャンスと捉え、行動していくべきだろう。
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