コンサルティングサービス
経営コラム
経済・政策レポート
会社情報

経済・政策レポート

Economist Column No.2025-063

日銀が0.25%利上げ~利上げ局面は続く

2025年12月19日 石川智久


■日銀が0.25%利上げ
本日、日銀が政策金利の0.25%引き上げを実施した。これによって30年ぶりの政策金利水準である0.75%となり、「金利のある世界」への回帰が一歩進むこととなった。そこで金融政策について、筆者の意見を述べたい。

■金融市場を睨みながら緩やかな利上げを続ける公算。
結論から言えば、今回の利上げはインフレ鎮静化とバブル抑制の観点から望ましいといえる。もっとも、今後の利上げペースには注意が必要であり、金融市場に悪影響を与えないペースを探りながら進めていくべきである。
昨今の状況を整理すると、わが国は金利のある世界に入っているが、これは名目ベースであり、実質ベースでは依然としてマイナス金利が続いている。それがここ数年来の一般物価上昇に加えて、資産価格上昇にもつながっている。さらに低金利は円安を招き、輸入インフレを引き起こしている。一方で、円安は輸出企業の業績改善期待などを通じて、株価高騰につながっている。また、近年の富裕層は海外投資を増やし、円安はその円換算リターン増やしている。一方、低所得者層は一般的に余資が乏しいため株式投資や海外投資をあまりしていない。つまり、低所得者層にとって円安は物価高というデメリットしか感じないが、富裕者層は保有資産の増大で痛みをあまり感じない。円安は格差社会を深刻化させている。
また、都心での不動産価格高騰も問題となっており、海外投資家の投機的な動きがその主因の一つとなっている。そして、その背景にも低金利と円安がある。海外の投資ファンドは、日本の低金利を活かして低コストで借入できることに加えて、円安が土地の割安感に繋がっている。そのため、多くの海外ファンドは都心5区等を中心に巨額の投資を行っているといわれる。その結果、ファンドは儲かる一方で、一般の人々は都内に住居を持てないといった状況を招いている。
このようにみると、現在のわが国では、一般物価の上昇だけでなく、資産バブルのリスクもみられる状況である。そこに加えて、政府もインフレ下で大規模財政出動を推し進めようとしている。こうしたなかでは、日銀が今後も金融引き締めを進めていくべき環境にあることは間違いない。もっとも、利上げのペースや幅はマイルドなものにすべきある。金融引き締めが性急に過ぎれば、金融市場にショックを与え、90年代のバブル崩壊の二の舞となる恐れがある。

■ターミナルレートは1.5%となる可能性
そうした観点を踏まえて今後の金融政策を予測すると、半年後に0.25%引き上げた後は利上げペースを年1回程度とし、2028年初頭に政策金利は1.5%になると予想している。低金利の副作用だけを考えれば、早期に実質ベースでプラス金利となる2%を目指したいところであるが、景気のサイクル等を考えると、緩やかな利上げペースで1.5%程度が今回の利上げ局面のターミナルレートとなる可能性が高い。
なお、高市政権は財政拡大を強く志向しており、来年度以降も政府の大規模な財政拡張が続く場合には、日銀が利上げペースを加速せざるを得なくなることも考えられる。日銀の利上げペースは、財政政策の動向にも大きく左右されるといえよう。



※本資料は、情報提供を目的に作成されたものであり、何らかの取引を誘引することを目的としたものではありません。本資料は、作成日時点で弊社が一般に信頼出来ると思われる資料に基づいて作成されたものですが、情報の正確性・完全性を保証するものではありません。また、情報の内容は、経済情勢等の変化により変更されることがあります。本資料の情報に基づき起因してご閲覧者様及び第三者に損害が発生したとしても執筆者、執筆にあたっての取材先及び弊社は
経済・政策レポート
経済・政策レポート一覧

テーマ別

経済分析・政策提言

景気・相場展望

論文

スペシャルコラム

YouTube

調査部X(旧Twitter)

経済・政策情報
メールマガジン

レポートに関する
お問い合わせ