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リサーチ・レポート No.2025-010

米議会予算局の財政赤字削減のオプションー“少数与党”状態のわが国に求められる民主主義国家の財政再建議論の基盤-

2025年10月24日 河村小百合


財政再建は、わが国に限らず各国にとって「ともすれば後回し」となってしまいがちな課題である。国民にとって、①財政運営の先行きが客観的にみてどうなるのかがわからない、②財政再建の具体的な手段がわからない、といったあたりがその理由であろう。だからこそ、主要国では独立財政機関を設立する動きが相次ぐ。

本稿では、独立財政機関として長い歴史を有し、国内外から高い評価を得ている米議会予算局(CBO:Congressional Budget Office)をとり上げる。“少数与党”状態にあるわが国で、財政再建の道筋を決して踏み外すことなく、確固たるものにしていくうえでは、どうしたらよいのかを考えたい。

石破前政権下で進められた 2025 年度当初予算の国会審議では、衆参両院で野党側の意向を受け容れ予算の“国会修正”が行われた。多様な民意を反映させる第一歩ではあったが、修正可能な規模や内容には限界もあった。

一部の野党からは、自らの予算要求に必要な財源を明示せず、財源は与党側で考えるべきだという主張もきかれた。“少数与党”状態では、与党側は野党側の要求を飲まざるを得ず、財政拡張的になりがち、との見方もきかれるが、それでは遠からぬ将来、財政運営が本当に行き詰まりかねない。

アメリカでは CBO が、『赤字削減のためのオプション』を隔年で刊行している。最新の 2024 年 12 月版では、義務的支出、裁量的支出、歳入の各側面を網羅し、様々な税目や課税ベースに関する実に 76 本ものオプションが示され、向こう 10 年間にわたる赤字縮減効果の推計値等が示されている。

同国では議会における予算審議や社会全体としての財政論議はわが国よりはるかに活発であるが、CBO による客観的な財政分析結果の提供という機能は、財政民主主義を機能させるうえでの重要な基盤となっている。

これに対してわが国では、国民、ひいては国会議員も、財政再建の具体的な選択肢を十分に持ち合わせておらず、国民は、各分野の政策運営の枠組みや実態についてすら、十分に知らされていないものもある。その例として、医療機関の経営実態や、租税特別措置の問題を挙げることができよう。

民意の多様化を反映に、“少数与党”状態となった今こそ、タブー視されがちだった問題に取り組み、様々な国民の声を公平に反映しつつ、財政運営の持続可能性を高めることができるチャンスでもある。わが国でも独立財政機関を創設し、民主主義市民社会を持続させていくうえでの客観的な財政情報の提供という財政インフラを強化することが求められている。


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