コンサルティングサービス
経営コラム
経済・政策レポート
会社情報

経済・政策レポート

JRIレビュー Vol.9, No.127

女性スタートアップ起業家はなぜ少ないのか

2025年10月09日 岩崎薫里


日本ではスタートアップに対してこれまでさまざまな促進策が講じられてきたにもかかわらず、いまだ世界におけるスタートアップ後進国の地位から脱することができていない。この一因として、人口の半分を占める女性がスタートアップの起業にほとんど乗り出していないことが指摘できる。スタートアップ創業者における女性比率は1割以下と推測され、ジェンダーギャップが世界的にみても大きいという日本の構造問題がここにも現れている。

女性のスタートアップ起業家が少ない要因は多岐にわたるが、なかでも大きいのは以下の3点である。
①身近なロールモデルの不在などにより、女性の間でスタートアップの起業が仕事の選択肢として認識されていない。
②女性がスタートアップの起業を決意した、あるいは起業に踏み切ったとしても、少数派としてさまざまなハードルが立ちはだかる。とりわけ、男性中心のコミュニティのなかで人的ネットワークを構築しづらい点は、各種の不利益につながっている。
③女性創業者は資金調達に苦労しがちである。人的ネットワークの不足に加えて、投資家のほとんどを男性が占めることが影響している。女性創業者の出産・育児をリスクと捉える男性投資家もいる。

良好とはいえない環境のもとでも、フロントランナーと呼べる女性起業家がここにきて登場している。その代表格であるJ-Startupの女性創業者は優秀でチャレンジ精神も旺盛だが、そんな彼女らにとっても出産は大きな試練となった模様である。対応策の一つと考えられるのが、自分一人ではなく共同創業者と起業し、自分の役割を一時的に担ってもらう存在を確保することである。男性との共同創業であれば、資金調達のハードルを下げることもできる。米欧のスタートアップでも男女による共同創業は増加傾向にある。

最近になって女性に特化したスタートアップ起業支援が登場している。そのようなものは不要との意見もあるが、女性起業家が少数派である現状においては、幅広い層のなかから女性起業家を発掘・育成するための過渡的な措置として重要な役割を果たし得る。こうした支援は、スタートアップの起業において性差があることに着目し、これを埋めるための取り組み、すなわちジェンダード・イノベーションとの関連で捉えることができる。

潜在的に挑戦意欲のある女性がスタートアップの起業に乗り出すには、前述の男性との共同創業や女性特化型支援に加えて、女性のライフスタイルなどに鑑みて①副業や週末起業で小さく始める、②育児が一段落したあとに起業する、なども有効であろう。また、ジェンダード・イノベーションの観点から性差に着目することは、それによって課題が浮かび上がり、その解消がビジネスチャンスとなることから、女性起業家が取り組む事業の一つの有力分野になり得る。スタートアップの起業は女性には不向きとの声が男女両方から聞かれるものの、アンコンシャス・バイアスに基づく部分が大きい。実際に女性起業家が活躍するようになれば、バイアスも解消されていくことが期待できる。


(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)
経済・政策レポート
経済・政策レポート一覧

テーマ別

経済分析・政策提言

景気・相場展望

論文

スペシャルコラム

YouTube

調査部X(旧Twitter)

経済・政策情報
メールマガジン

レポートに関する
お問い合わせ