コンサルティングサービス
経営コラム
経済・政策レポート
会社情報

経済・政策レポート

リサーチ・フォーカス No.2025-034

東京に迫る「ジェントリフィケーション」問題―住宅価格の高騰が招く社会の分断、供給対策が急務―

2025年09月09日 西岡慎一


東京の住宅価格が高騰しており、一般的な給与所得層にとって都心居住のハードルが高くなっている。この背景には、資材価格の高騰や海外資金の流入など複数の要因が絡み合っている。

さらに、価格高騰の根底には、東京の産業構造が高度化し、都市の魅力を高めていることがある。コロナ禍を経て加速したデジタル化の進展やインフレ経済への転換といった潮流が、情報通信、金融、専門サービスといった高付加価値サービス産業を東京に集積させている。これに惹かれて、地方から東京への移住者も増えている。その結果、東京圏では年収 1,000 万円を超える高所得層が 160 万人を超え、共働き高収入世帯や高度外国人材が都心の住宅需要を強めている。

一方、中低所得層は郊外への居住を余儀なくされている。長年親しまれてきた地域コミュニティは姿を消し、社会的多様性が失われている。こうした現象は「ジェントリフィケーション」と呼ばれ、欧米諸都市では長年にわたり社会問題として議論されてきた。住宅価格の高騰は、エッセンシャルワーカーの居住困難やサービスのアクセス低下といった問題を招いたほか、社会の分断を深め、ポピュリズム勢力台頭の温床ともなっている。

東京がジェントリフィケーションの負の側面を最小限に抑え、誰もが住みやすい多様な都市であり続けるには、具体的な政策を導入する必要がある。欧米の大都市では、「アフォーダブル住宅(手ごろな住宅)政策」として、低所得者向けの家賃支援や住宅供給促進策を実施し、一定の成果をあげている。東京都も割安な住宅の供給に取り組んでいるが、十分な供給に向けて政策規模を拡充する余地があろう。

最近では、外国人による不動産の取得制限を求める声も高まっているが、過度な規制は東京の不動産市場の価値を棄損するリスクがあるため、全面的な投資規制ではなく、居住実態がない取得など的を絞った規制にとどめるべきであろう。


(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)
経済・政策レポート
経済・政策レポート一覧

テーマ別

経済分析・政策提言

景気・相場展望

論文

スペシャルコラム

YouTube

調査部X(旧Twitter)

経済・政策情報
メールマガジン

レポートに関する
お問い合わせ