リサーチ・アイ No.2025-085 電動化が加速するベトナム二輪車市場 ― 地場・中国勢に押される日系メーカー、巻き返しへの戦略が必要 ― 2025年09月08日 呉子婧ベトナムの二輪車市場は東南アジアの脱炭素化に向けた課題。市場は東南アジア第2位の規模に達しており、その約9割がガソリンに依存。こうした状況を踏まえ、ベトナム政府は首都ハノイやホーチミンでガソリン二輪車規制を実施するなど脱炭素化に向けた取り組みを推進。その結果、同国の電動二輪車市場は足元で急拡大。2025年上半期の販売台数は前年比+99.2%と、中国・インドに次ぐ世界第3位の消費国へと躍進。25年通年の市場規模は、16年比で約6倍の300万台前半に達する見通し。政府試算によれば、ハノイだけで2030年までに200~300万台の買い替え需要が発生すると見込まれており、脱炭素への移行を一段と後押し。ただし、以下の2点が電動二輪車普及の課題。第1に、郊外を中心に公共交通機関が未整備であること。電動二輪車は航続距離が短く、公共交通との併用が不可欠。第2に、地方を中心に電力網や充電スタンドの整備が遅れており、電動二輪車の利便性を損なっていること。こうした課題は、日系メーカーにとって電動二輪車市場でのプレゼンスを向上させる好機となる可能性。日本勢は、これまでベトナムでガソリン・ハイブリッド二輪車の市場シェアをほぼ独占してきた一方、電動二輪車の認知度が高くない状況。電動市場では、価格競争力を保つ地場勢や中国勢が台頭しており、とりわけ現地メーカーのビンファストは、独自の充電スタンド整備を背景に、電動二輪車市場シェアの5割超を獲得。日本勢が競争力を維持するためにも、長年ベトナムのインフラ整備を官民で支援してきた経験を生かし、課題解決策を提示することが重要。例えば、地方における公共交通機関、電力インフラなどの整備といったまちづくり支援と連動し、日系二輪車メーカーの充電インフラ整備を進めていくことで、日本製品のシェア向上につながる可能性。(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)