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ビューポイント No.2025-017

ポスト「新自由主義」を探る ~「分断」解消に向け保護主義は長期化、株主資本主義、小さな政府も見直しへ~

2025年09月03日 牧田健


トランプ政権の経済政策は、1980 年代以降世界経済の潮流となってきた「新自由主義」とは一線を画している。「新自由主義」に伴い所得格差が著しく拡大し、社会の「分断」が深刻化してしまったことが背景にある。アメリカのジニ係数は、財輸入が低水準で政府支出が拡大していた 1970 年代までは低下傾向にあったが、「グローバル化」を受けた財輸入の増加、「小さな政府」のもとでの歳出抑制に伴い、上昇に転じ、足元では 1930 年代以来の高水準にある。

貿易は本来、一国の経済全体ではプラスながら、淘汰される産業従事者への再就職支援、所得再分配政策等は手薄になりがちである。結果として 1980 年代以降の「グローバル化」は先進国で製造業を支えてきた中間所得層から新興国への所得移転を招いた形。期待された「トリクルダウン」は起こらず、与党支持層の変化や財源不足から、十分な再分配政策も実施されず、格差拡大が進行。企業では、「株主資本主義」が蔓延するなか、労働分配率を引き下げる一方、株主還元が強化されてきた。

「分断」の是正に向け、アメリカ政府は、製造業の復活を掲げ、保護主義的なスタンスを強めている。今後も保護主義姿勢が続く公算大ながら、高コスト等を踏まえると、所得格差の大幅な縮小は期待薄である。一方で政府は、これまでの不介入のスタンスを改め、産業支援政策を積極化しているが、所得格差の縮小につながるかは予断を許さない。それよりも、教育費の高騰により格差が固定化し始めているなか、高等教育への公的支援の強化に優先して取り組むべき。また、移民の抑制で安価な労働力の確保が困難になるなか、政府は排外主義に陥ることなく、最低賃金を引き上げに繋げるべき。企業も「ステークホルダー資本主義」への転換を明確にし、労働分配率の一方的な引き下げに歯止めをかける必要あり。

一方、人口が減少しているわが国では、海外需要の取り込み、高齢者・女性の就労増加、規制緩和等を通じた効率的な経済・社会への変革が必要不可欠であり、アメリカの動きに過度に流されることなく、それら課題に粛々と取り組むべき。


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