JRIレビュー Vol.7, No.125
日本経済見通し
2025年07月31日 松田健太郎、藤本一輝、古宮大夢
足元の日本経済は総じて緩やかに回復しているが、先行きは減速すると予想する。背景には、アメリカの関税引き上げがある。関税引き上げによりアメリカ向け輸出が減少するほか、世界経済の減速や不確実性の高まりを受けて、その他の国向けの輸出も下押しされると見込まれる。加えて、こうした製造業の業況悪化は、非製造業にも一定程度波及する可能性がある。
もっとも、アメリカの関税引き上げの影響を考慮しても、わが国は深刻な景気後退を回避する見通しである。①ソフトウェア投資や賃上げといった構造的な人手不足への対応、②食料品やエネルギーを中心とする物価の鈍化、③増勢を維持するインバウンド需要、④緩和的な財政・金融政策といった要因が景気を下支えするためである。
上記のメインシナリオに対し、アメリカのトランプ政権が掲げる政策が、自由貿易や脱炭素、安全保障といった国際公共財の機能不全を招き、国際秩序が揺らぐことがリスクとして指摘できる。国際秩序の変容がわが国経済の構造的な弱さと相まって、成長力を低下させる恐れがある。
わが国は国際秩序の転換に伴う悪影響に耐えられるように、経済体質を強化・再構築する必要がある。保護主義の常態化への備えとして、多国間連携を通じた自由貿易体制の維持・強化に注力するほか、国内の産業構造の転換も重要である。加えて、食料・エネルギー調達経路の多様化や財政健全化も急務である。
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