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リサーチ・フォーカス No.2025-027

東京と地方で広がる生産性格差 ―「集積の経済」で高度化する東京、最低賃金に影響も―

2025年07月29日 村瀬拓人西岡慎一


わが国では地域間の生産性格差が広がっている。東京と地方の格差はコロナショック後に一段と拡大しており、リーマンショック後の縮小局面から反転している。この一因として、東京の産業構造が高度化していることが挙げられる。東京では情報通信、金融、不動産、専門サービスといった生産性が高いサービス業に雇用がシフトしている。これには、デジタル化の加速やインフレへの転換といったコロナ後の構造変化が色濃く反映されている。一方、地方ではこうした高度化の動きに乏しく、生産性が相対的に低い医療分野へ雇用がシフトするにとどまっている。

高付加価値サービス業への雇用シフトが東京に偏る一因として、「集積の経済」が挙げられる。高付加価値サービス業は人口や企業が集積する都市部に立地することで、ビジネス機会の効率的な獲得や高度な人材へのアクセスなどが可能となり、生産性が高まるという性質がある。こうした生産性格差は賃金格差として現れ、地方から東京への労働移動を招き、これが人口や企業の集積を通じて、高付加価値サービス業の経済活動をさらに活発化させるメカニズムが作用している。

このような地域間の生産性格差は、最低賃金の設定にも影響を及ぼしうる。政府は最低賃金の地域差縮小を政策方針に掲げているが、生産性に見合わない賃金引き上げは、中小企業の負担を増大させるほか、物価上昇圧力を高める可能性もある。こうした事態を回避するためには、特定最低賃金制度の活用を通じて、産業ごとの生産性に即した賃金に設定することが一案である。また、地方の生産性底上げに向けて、中小企業の関連支援を強化していくことはもとより、地方中核都市への戦略的な集積を促し、東京一極ではなく「多極集中」を図ることで高付加価値産業の育成を図ることも重要である。


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