リサーチ・レポート No.2025-005
【2025~26年度欧州経済見通し】トランプ関税が下押しする欧州経済 ~ 米欧の「自国第一主義」がリスクに ~
2025年06月30日 中井勇良、立石宗一郎
足元の欧州経済は持ち直し。米関税賦課前の駆け込み需要による輸出増が生産を後押ししたほか、底堅い所得環境を受けた個人消費の増加が背景。
当面のユーロ圏経済は減速する見込み。米国の関税政策はドイツを中心として製造業を低迷させ、景気全体を押し下げる見通し。もっとも、堅調なスペイン経済が下支えとなり、景気の底割れは回避される公算。来年入り後には財政拡張の効果が発現し、景気を押し上げる見込み。
英国経済は先行き緩やかに回復する見込み。米国関税政策の影響が限定的であることや、物価の騰勢鈍化による家計の購買力回復が背景。BOEの利下げも企業の設備投資を下支えする見込み。
こうした標準シナリオに対して、米欧の「自国第一主義」の高まりが当面のリスク。米国は、欧州に対して関税賦課や防衛費負担増を要求。①製造業の弱体化や②財政の持続性に対する信認低下が、欧州景気を下押しする恐れ。さらに、欧州においても、③反移民への機運が高まるなど、自国を優先する動きが強まる状況。労働力不足や政情混乱を通じて経済成長力が低下する可能性も。
(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)