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ニューロダイバーシティマネジメント研究会2025 設立総会実施レポート

2025年06月24日 木村智行


 2025年6月4日、日本総研が主催する「ニューロダイバーシティマネジメント研究会 (以下、本研究会)」の2025年度の設立総会(キックオフ)を行った。設立総会では、人材獲得戦略としてのニューロダイバーシティへの期待とインクルーシブな社会を作ろうという各社の気概が相まって、これから社会が変わっていく可能性を強く感じた。本稿では、当日の模様をお伝えしたい。
 
 本研究会は、発達障害の有無に関係なく個々の持つ能力が発揮できる社会を目指し、発達障害がある人の活躍機会創出および社会全体のニューロダイバーシティ(注1)の機運醸成を目的として活動している。キックオフ時点での参画企業はIT・金融・医療・人材紹介など多様な業種10社である。設立の背景や活動内容についてはプレスリリースをご参考いただきたい。(注2)

(注1) 脳・神経の発達特性を多様性と捉えて社会の中で活かし合おうという考え方
(注2) ニューロダイバーシティマネジメント研究会が発達障がいのある人向けIT業務体験プログラムの試験提供や人材輩出エコシステムづくりなどを2025年度に開始 (ニュースリリース/2025年6月4日)

 各企業ともニューロダイバーシティや発達障害がある人の能力発揮可能性に着目している。中にはすでに実践している企業や実践に向けて動いている企業もある。キックオフでは、各企業のこれまでの実践やこれからへの期待を共有し、ニューロダイバーシティの推進に係るネットワークを構築した。


開会挨拶

 はじめに、日本総研の取締役専務執行役員である木下輝彦より開会の挨拶を行った。『発達特性がある人たちの創造性・集中力を発揮できる環境をどう整備するか、職場などのコミュニティにおけるコミュニケーションをいかに円滑に取っていくかという課題を解決することは、言い換えると特性を価値として表出させるための環境整備によって、企業の機能価値が大きく変わるということでもある。これまで欧米諸国が先行して葛藤・対応してきたが、今後人口減少下の日本にとってもより一層重要な課題となっていく。「障害」ではなく「発達特性」を活かしていくという視点に立つべき時が来ているのではないか。自律協生社会の実現を掲げる日本総研が本研究会を通じて、会員企業と連携しニューロダイバーシティの機運を高めていきたい。』と会員企業連携の意気込みを述べた。

研究会概要説明

 続いて、本稿の筆者である木村から研究会の活動概要を紹介。発達障害がある人やその傾向がある人を主な対象とした企業連携型IT業務体験プログラムの試験提供や、発達障害がある人が活躍機会を拡大するためのエコシステム形成に取り組んでいくことを述べた。発達特性がある人が活躍できる柔軟な就労環境の整備を通じて、あらゆる人にとっての働きやすさを目指していくことが活動目的であることを参画企業と確認。併せて、活躍可能性がありながらも既存の採用プロセスでは出会えていない人材と各企業が出会う機会を作っていきたいと強調。また、筆者より、社会全体でのニューロダイバーシティの機運醸成と各企業でのインクルージョン実績づくりの両輪が社会を前進させるためには重要であることを指摘した。

参画企業講演1:日揮パラレルテクノロジーズ株式会社
 ニューロダイバーシティの先進企業である日揮パラレルテクノロジーズ 取締役CTOの長尾浩志氏より、同社が取り組んできたデジタル領域でのニューロダイバーシティ推進に関して講演。46名の従業員のうち8割強が発達・精神障害がある人が活躍している同社にて、データ分析や機械学習に取り組み、日揮グループ内でプレゼンスを発揮している事例を紹介。さらに新たなチャレンジとして、マネージャー人材の育成などの紹介。障害がある人の活躍を通じて、誰しもにとっての働きやすさを目指したいと語られた。

参画企業講演2:シスメックス株式会社
 続いて、シスメックス 執行役員 辻本研二氏が同社のニューロダイバーシティの活動と機運醸成への期待について講演を行った。同社は発達特性を理解するための視線解析ソリューションであるGazefinderの開発を進めており、乳幼児の保護者向けイベントを通じたGazefinderへの反応を紹介。「子どもの発達特性や興味を知ることができてとてもうれしかった」といった利用者のコメントの共有を通じて、研究会から広がっていくニューロダイバーシティの機運醸成に対する期待が語られた。

パネルディスカッション:
 昨年度から継続して参画している企業3社によるパネルディスカッションを行った。昨年度の活動を振り返り、参画後の社内の変化や今年度活動への期待について述べられた。昨年度の研究会活動を通じて、高度IT領域で活躍する発達障害がある人の具体例や能力発揮可能性を知ることができ、採用検討に効果的だったと各企業から共有があった。中でも実際に採用を行った企業からは、「これまで自社にはいなかった専門性の高い人材が獲得できた」といった共有もあり、今期の活動を通じてさらに多様な人材にアクセスできる可能性への期待が語られた。

閉会挨拶

 最後に、日本総研の創発戦略センター所長である松岡靖晃が閉会の挨拶をし、研究会の活動への期待と今後の方向性について述べた。

 閉会後には各参画企業同士のネットワーキングを行った。各企業の考えや事例についての情報交換が活発にされており、今後の活動への期待が高まっていることを感じた。ネットワーキングの中では、「積極的に本研究会を広めていきたい」といった意見や「自分たちの持っているノウハウをぜひ提供したい」といったありがたい提案をいただいた。ニューロダイバーシティの活用は多くの企業にとってチャレンジであるが、本研究会を通じて前向きに取り組んでいくエネルギーも同時に感じた場でもあった。こうしたエネルギーを受け止めつつ各企業と連携して、社会全体としてのニューロダイバーシティの機運を醸成していきたい。


本コラムは「創発 Mail Magazine」で配信したものです。メルマガの登録はこちらから 創発 Mail Magazine

※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。

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