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Economist Column No.2025-017

国際秩序の変化を睨んだ骨太方針2025~激変する世界情勢を象徴

2025年06月16日 石川智久


■冒頭に「国際秩序の変化」に言及
今年の「経済財政運営と改革の基本方針 2025」(以下、骨太方針)は、冒頭で「世界に安定と繁栄をもたらしてきた国際秩序は、現在、自国第一主義や権威主義的国家の台頭によって変化しつつある。力や威圧による一方的な現状変更の試みも続いている」と、異例の書き出しとなった。これは、トランプ政権による関税戦争や、中国の経済的威圧に対する危機感を示したものである。そして、「法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序を維持・強化」すると、日本が世界に対して、自由主義世界のリーダーとなる意志を示したことは、世界各国からの信頼感醸成につながるとみられる。また、「新たな国際秩序・ルール作りにも対応・参画」するとの文言も入ったが、これは国際的観点だけでなく、日本の国益にも資するものである。

■対米関係と米国以外との関係、両方を強化する姿勢を明示
また、「日米同盟は地域の平和と繁栄の礎であるとの認識の下、日米協力を更に高みに引き上げつつ、G7、ASEAN、豪、印、韓、EU、NATOを含む同志国・機関との連携を強化する。グローバル・サウスへの関与の強化を通じ、グローバル・ガバナンスの強化に取り組む」として、日米関係の強化と米国以外の国々との連携強化を両にらみで進める方針を明確化したことも、現実的かつ日本の現状にあったものといえる。

■自由主義世界のリーダーとして具体的な行動を
米国と中国という世界のGDP1位と2位の国が、保護主義的かつ経済的威圧を与える国になるという厳しい時代に突入するなか、日本のリーダーシップに対する世界各国の期待は非常に高い。こうしたなか、骨太方針で自由世界のリーダーとしての決意が明記されたことは意義深いと考える。それに向けた具体的な取り組みを急ぐ必要がある。まず、自由貿易のリーダーとなるためには、日本が主導してきた経済連携協定であるCPTPPの強化・拡大が重要である。また、世界規模のルールづくりに参画するためには、国際機関への関与を深めていく必要があり、国際機関の日本誘致のほか、世界の主要国に比べて少ない日本人の国際公務員の増員などが求められる。
そして何よりも、日本としての国際秩序の変化に対応したビジョン策定が必要であり、経済財政諮問会議等で国民的な議論を深めていくべきである。かつてわが国は、中長期の視点で将来の経済社会の在り方を描き、そこからバックキャストして具体的な制度・政策を具体化してきた。そして、経済審議会等のように民間の人材や意見を巻き込んで国造りを進めてきた。いまこそ、その経験を活かし、国民的議論のもとに国としての方向性をしっかり打ち出していく必要がある。



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