リサーチ・アイ No.2025-037 経済好調も、製造業が伸び悩むインド― 中国からの対内投資拡大が見込めないなか、ビジネス環境の改善が重要 ― 2025年06月03日 細井友洋インド景気は回復。1~3月期の実質GDP成長率は、前年同期比+7.4%と主要国で突出。もっとも、高成長はもっぱらサービス業がけん引しており、製造業はスマートフォンなどの一部産業を除き伸び悩み。製造業では、実質GDPの伸びがサービス業に比べて小さく、経済全体におけるプレゼンスは低下。また、政府が「メイク・イン・インディア」を掲げて強化を目指す高付加価値製造業の国際競争力も高まらず。2023年の貿易特化係数(輸出競争力の高低を示す)は、スマートフォンを含む電気機械などを除き、中間財・最終財ともにゼロ未満と競争力は低。2013年からの変化を見ても、明確に改善したのは、電気機械の最終財など一部のみ。製造業停滞の一因は、対内直接投資の伸び悩み。2024年の対内投資額を2016年と比較すると、非製造業は増加した一方、製造業は減少。投資額の規模にも大きな開き。製造業の対内投資低迷の背景には、巨大な資本力と技術力を持つ中国からの投資の伸び悩み。インド政府は、経済安全保障の観点から、国境を接する国に対する事前審査制を2020年から施行しており、中国・香港からの直接投資を事実上停止。インドでは、昨今のパキスタンとの関係の緊迫化を受け、中国との関係も不透明化しているため、当面、中国からの投資拡大は見通せない状況。他方、米国の保護主義政策でサプライチェーンのリスク分散が求められるなかで、日米欧などのグローバル企業は製造拠点としてのインドに注目。インドがこの機会を生かして製造業を強化するためには、不透明な法制度の運用、インフラ整備の遅れといったビジネス上の課題解決を加速させ、投資環境を改善する必要。(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)