リサーチ・フォーカス No.2025-014 米移民規制の変遷と強まるトランプリスク ― 懸念される人口減や高齢化、製造業回帰も困難に ― 2025年05月27日 立石宗一郎米国は移民によって建国された国であり、積極的に移民を受け入れてきた。しかし、人口増加に伴い、徐々に選択的・制限的な受け入れに方針転換してきた。トランプ政権は移民規制を強化し、こうした潮流を加速させる方針である。移民規制として、新規移民の流入抑制や在米移民の強制送還を打ち出している。さらに、不法移民の取り締まりを強化するだけでなく、合法的に滞在が認められていた亡命希望者も不法移民とみなす構えである。こうした移民排斥の動きが強まれば、米国では少子高齢化が加速し、人口も減少に転じる可能性が高い。その場合、高齢化も進み、2030年代には人口に占める65歳以上の高齢者の割合が21%を超え、超高齢社会に突入する見込みである。人口減少と高齢化の進行は、米国経済の成長力を大きく下押すと見込まれる。需要面では、人口減少を通じて消費総額が減少するほか、高齢化の進行で消費が少ない高齢世帯の割合が増加する。供給面でも、人口減少を通じて労働力が押し下げられる恐れもある。移民排斥を受けて労働力が不足すれば、トランプ大統領が目指す製造業の米国内回帰も困難になると見込まれる。極端な関税政策などを受けて、トランプ大統領の支持率は低下傾向にあるものの、移民政策は依然として支持が不支持を上回っている。世論の支持を背景に、移民規制の強化が続く可能性は高く、今後の政策動向を注視する必要がある。(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)