リサーチ・フォーカス No.2025-012 欧米環境政策の現状と展望~気候変動/生物多様性への取り組みは正念場に~ 2025年05月23日 大嶋秀雄人類の活動による地球温暖化や環境汚染、生物多様性の損失は、地球の環境収容力(プラネタリー・バウンダリー)を超えつつある。国際社会は、長年、気候変動や生物多様性の問題に取り組んできたが、十分な成果は得られておらず、温室効果ガスの排出削減は進まず、生物多様性の損失も拡大。さらに、足元では環境対応への逆風が強まっており、気候変動/生物多様性への取り組みは正念場に。<気候変動>具体策の実施が重要な局面ながら、①具体策に関する国際的な合意形成の難航や、②様々な課題や規制対応負担の顕在化による企業からの反発に加えて、③各国政治の不安定化による政治的な逆風も強まる。<生物多様性>国際的なルール整備等が進められているが、①対象分野が多岐にわたり、ルール整備に時間を要していることに加えて、②気候変動対応と同様に政治的な逆風も強まる。こうしたなか、欧州や米国の環境政策に変化が生じている。<欧州>これまで環境政策をリードしてきたが、厳しい規制等に対する域内企業の反発や、経済状況の悪化による世論の変化などを受けて、環境規制の簡素化など現実路線を模索する動き。<米国>気候変動対策に否定的なトランプ政権が環境政策を大きく転換。生物多様性への言及は限られるが、製造業や資源開発を重視する姿勢であり、生物多様性にも悪影響が及ぶ恐れ。国際的な動向を踏まえると、今後の方向性は以下。①逆風は長期化:不安定な政治情勢に加えて、米国の関税政策や世界経済の減速懸念も逆風に。②気候変動対応は現実路線に:欧州が現実路線に舵を切り、わが国等と連携余地拡大。企業の取り組みを後押しする仕組み作りや多様なステークホルダーの連携に加えて、温暖化への適応策も重要に。③生物多様性は実施フェーズに:気候変動対応も参考に、目標設定やモニタリング、情報開示基準、支援手法等の制度を整備し、具体策を実施するフェーズに。(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)