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アカデミアからB Corp™ムーブメントを推進する

2025年05月16日 橋爪麻紀子渡辺珠子瀬名波雅子、南かのん


 2025年3月14日、株式会社日本総合研究所(以下、日本総合研究所)の社会価値共創スタジオ(東京・丸の内)にて、B Corp Month(※)のタイミングに合わせた対話型イベント「B Academics Japan Chapter - アカデミアからB Corpムーブメントを推進する -」(B Market Builder Japan、日本総合研究所共催)が開催されました。本イベントは、B Corp Monthというグローバルキャンペーンの開催時期に合わせ、オンラインとのハイブリッド形式で開催され、日本各地だけでなく海外からも大学、研究機関、企業、B Corp認証企業などから約30名が参加しました。参加者同士が、これまでの成果を共有し、今後のネットワークづくりや協働の可能性を探る貴重な場となり、B Corpムーブメントの新たな広がりを感じさせるものとなりました

B Corpと教育・研究の接点を深める日
 日本国内でのB Corp認証企業は55社(2025年3月時点)を超え、企業・自治体・個人の間での認知も徐々に広がりを見せています。こうした背景を受けて、教育や研究の現場でもB Corpを題材に取り上げ、「良い企業とは何か」を議論することが少しずつ浸透してきました。日本総合研究所は米NPO法人B Academicsと2023年にMOUを締結したうえで、早稲田大学ビジネススクールと共同で開発したケーススタディを用いた短期の共同講座を2024年の2月、10月に2回開催しています。3月のイベントはこの短期講座に続く機会として、教育・研究、そして実践を通じてB Corpをより深く社会に根づかせていくための第一歩として企画されました。イベントプログラムは以下の通りです。

表 プログラム概要
1.オープニング:
2.メインセッション:B Corpと教育・研究
  セッション①:B Academicsとは何か
  セッション②:教育と実務の現場からの事例共有
3.ワールドカフェセッション:対話の中で広がる学びとつながり
  対話1「B Corpを教育で伝える際/研究する際の工夫や課題」
  対話2「このネットワークをどのように活かしていくか?」
4.クロージング


オープニング:共に学び合う場のはじまり
 冒頭のオープニングでは、日本総合研究所とB Corp認証取得支援コンサルタントの岡氏よりイベントの趣旨が説明され、続いて参加者の簡単な紹介を行いました。リアル会場では、和やかな空気のなかB Corp関係者ならではの積極的な意見交換がなされ、オンライン上でも互いの関心や立場に共感を寄せ合うコメントが飛び交うなど、まさに「共に学び合う場」としての雰囲気が立ち上がっていきました。

 大学・高校・専門学校の教員、大学院生、企業の人材育成担当者、B Corp認証企業の実務担当者、自治体関係者など、さまざまなバックグラウンドを持つ参加者が一堂に会し、B Corpを「教育や研究を通じて社会に広げたい」という共通の想いのもと、対話が実現しました。

セッション①:B Academicsとは何か
 まず、日本総合研究所より、B Academicsとの協働活動の紹介が行われました。B Academicsは、アメリカに本部を置くNPO法人であり、教育を通じたB Corpムーブメントの促進やサステナビリティ分野における様々な研究活動の促進を目的としています。現在、世界各国の大学・研究機関でB Corpに関する教育プログラムや研究活動が進められる中、B Academicsはそのネットワーキングのハブとして、情報共有や連携基盤を担っています。日本総合研究所は2023年に、アメリカの大学教授らと議論を重ねながら、早稲田大学ビジネススクールとのプロジェクトを進めてきたことが紹介されました。

セッション②:教育と実務の現場からの事例共有
 メインセッションとなった事例紹介パートでは、教育・研究・企業それぞれの立場から参加者が登壇し、実際にB Corpを題材とした教育プログラムや研究の取り組みの事例が紹介されました。早稲田大学ビジネススクールの牧 兼充 准教授からは、日本総研との共同プログラムでの経験の他、海外のB Academics、地域コミュニティであるB Localとのコミュニケーション事例が共有されました。続いて、法政大学の土肥 将敦 教授からは、学部生に対してB Corpをどのように伝えていくか、実際のB Corpと連携した教育活動の事例が紹介されました。立命館アジア太平洋大学の鈴木 勘一郎 名誉教授(B Corp「エコリング」顧問)からは、ESG経営とB Corpに関する研究が紹介され、その経営効果や企業価値への影響を考えるきっかけとなりました。B Corp認証企業「ピープルフォーカス・コンサルティング」の顧問・ファウンダーである黒田 由貴子氏からは、多摩大学大学院における「21世紀の良い会社の条件」講座でB Corpをどう取り扱ったかの経験が共有されました。そして、B Market Builder Japan共同代表であり、B Corp認証企業「バリューブックス」の代表でもある鳥居 希氏からは、教育機関での活動や大学生の声を紹介しながら、B Corpの基準が学生がより良い人生を歩むための力となりうるか?という問いが会場に投じられました。教育・研究・実践を通じて、B Corpが社会に何を伝えていくのかを考え続けることで、結果として次世代への教育にもつながっていくという指摘に、多くの参加者が深く頷いていました。

セッション③:対話のなかで広がる学びとつながり
 後半はワールドカフェ形式による対話セッションが行われました。「B Corpを教育で伝える際/研究する際の工夫や課題」「このネットワークをどのように活かしていくか?」という2つのテーマについて、テーブルごとに自由な対話が展開されました。

 リアル・オンライン問わず、参加者は積極的に意見を交換し、悩みや成功例、期待や可能性について語り合いました。教育機関の参加者からは「自分の授業でどう取り入れるかイメージが湧いた」、企業の参加者の「社内の人材育成に活かせる視点をもらえた」といった意見が出され、場の議論がそのまま“次のアクション”につながる手応えが感じられました。

クロージング:共鳴から生まれる次の一歩
 クロージングでは、今後の国内におけるB Corp x 教育活動の活動展開や連携の可能性について、参加者から前向きな声が寄せられました。「継続した情報交換の場が欲しい」「他大学と共同で授業を組んでみたい」「B Corpと連携した研究を検討したい」など、イベントをきっかけとした新たな構想が次々に浮かび上がりました。


 今回のイベントは、単なる情報発信の場に留まらず、「日本国内におけるB Corp」という共通の価値観を軸に、人と人がつながり、教育と研究と実践が交差する場となりました。これを出発点に、日本総合研究所は次世代への学びや変革を共創する新たなムーブメントを、引き続き推進していきます。今後も、学びと実践を行き来するイベントやプロジェクトを継続的に展開できればと思っておりますので、乞うご期待ください。

(※) B Corp MonthとはB Corp認証企業やB Corp認証に関心を持つ企業等が、より良いビジネスを推進するためにどのように協力して前進するかを共有しあうグローバルキャンペーン。毎年3月に全世界で行われ、各地でセミナーやイベント等が開催される。


※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。

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