リサーチ・アイ No.2025-022
米中関税合意により、グローバル景気の後退懸念は緩和 ― 期待される各国・地域の対米交渉の進展、米中対立再燃には要警戒 ―
米国と中国は、互いに課していた高率関税の引き下げで合意。双方の追加関税は5月14日から115%引き下げられるとともに、中国が4月2日以降講じてきた非関税措置も一時停止または解除される方針。また、両国は経済・貿易関係を議論する枠組みの創設でも合意。
今回の電撃的合意の背景にあるのは、両国の政治的・経済的事情を背景とする利害の一致。米国においては、急速な関税引き上げに対する世論の反発から、トランプ大統領の支持率が46%まで低下。就任後100日時点の支持率としては、戦後の大統領で最低水準。中国においても、4月の製造業の業況感が3カ月ぶりに50を割り込む水準に低下。高関税の悪影響が内外需に波及し、デフレを深刻化させるとの懸念が増大。
米中合意を受けて、発動中または発動予定の関税は、①国別の違法薬物対策関税、②個別品目関税、③すべての国が対象の10%相互関税。これら以外の追加関税が実施されないとの想定の下で試算すると、世界全体の成長率は▲0.5%ポイント下振れにとどまり、今年は3%前後の成長率を維持する見通し。関税合意により、米中の大幅な経済減速が回避され、世界経済への悪影響も緩和される公算大。他方、日本や韓国など、主力輸出品目に個別関税が課される国・地域は、引き続き強い下押し圧力を受ける見込み。
今後の焦点は、相互関税の上乗せ分を巡る各国・地域の対米交渉の行方。米中・米英の合意を受け、その他の国・地域でも早期の合意に期待が高まる状況。ただし、今後の米中交渉が暗礁に乗り上げて対立が再び激化する可能性も十分残るなど、引き続き不確実性が高い状況が続いており、経済が下振れしやすい点には要警戒。
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