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リサーチ・アイ No.2025-020

トランプ関税で中国景気は内外需ともに悪化へ ― 中国政府の景気対策が焦点、今のところ財政拡大方針は示されず ―

2025年05月01日 室元翔太


米国と中国の間で激化する貿易戦争の悪影響は、複数の経路を通じて中国の内外需に波及し、デフレ圧力を強める見込み。主要な経路は以下の2点。

第一に、対米輸出の大幅減少。中国が直面する米国の追加関税は、大別して、125%の相互関税、25%の品目別関税(鉄鋼、アルミニウム、自動車)、税率未定の品目別関税(電子機器、医薬品など)の3種類。これらの影響を勘案すると、中国の対米輸出は約6割(GDPの約1.5%相当)減少する見込み。とくに他国による代替可能性が高く、高関税が課されている玩具などの輸出減少が大。中国では、輸出に占める米国のシェア(14.7%)はASEAN(16.4%)に次いで大きく、対米輸出の減少が景気に及ぼす影響大。さらに、90日間猶予されているASEANへの相互関税が発動すれば、ASEANを通じた米国への迂回輸出も減少し、外需への打撃は一層大きくなる恐れ。

第二に、輸出企業の業績悪化を通じた内需の下押し。輸出減少で打撃を負った製造業は、雇用や設備投資の縮小を余儀なくされる公算大。製造業を含む第二次産業が中国全体の雇用と投資に占める割合は3割程度と大きいため、消費と投資の下押し影響は大。すでに、4月の製造業の業況感は、3カ月ぶりに50を割り込む水準に低下。新規輸出受注指数が、2022年12月(ゼロコロナ政策時)以来の水準まで落ち込んだことが要因。

経済の腰折れ回避に向けて、中国政府の景気対策に焦点。4月末の共産党中央政治局会議では、輸出企業支援や雇用下支えの取り組みが示されるも、内需喚起に向けた具体的な財政拡大方針は盛り込まれず。大規模な財政出動がなければ、2025年の実質GDP成長率は目標の5%を大きく割り込み、3%台となる見通し。


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