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JRIレビュー Vol.6, No.124

自治体による終活情報登録事業の活用に向けて

2025年04月21日 岡元真希子


終活情報登録事業は、主に高齢者が緊急連絡先、持病、葬儀の生前契約、お墓の場所などの情報を自治体に登録し、本人の救急搬送時や死後などに、警察・消防、医療機関ならびにあらかじめ指定した情報開示対象者から照会があった場合に、その情報を自治体が伝達するものである。2018年に神奈川県横須賀市で始まり、現在15の自治体で同様の事業が行われている。2023年以降に開始した自治体が多くを占める。

現在、多くの地域で高齢者を対象に、自治体が直営で実施しており、窓口で紙での届け出を受け付けている。一部の自治体では、緊急連絡先を引き受けた人からの同意書を必須としており、頼れる親族がいない人には、死後事務委任契約などの選択肢も提示している。本人からの申し出がない限り情報を更新しないという自治体も多い。

事業の登録者数は、最も歴史の長い横須賀市で約1,000人、その他の自治体は数人から数十人であり、情報の照会を受けた経験のある自治体はまだ少ない。相談はあっても登録に至らない人が多いことや、登録者数が少ないことを課題として認識している自治体も多い。情報照会がないまま亡くなり、住民票との照合によって後から死亡していたことに気付くなど、情報の活用にも課題がある。

現在の登録者の多くは、別居だが頼れる親族がいる人であり、頼れる親族がまったくいない人や、同居の親族がいるが頼れない場合は、事業を利用しづらい。頼れる親族がいない人が民間事業者と契約をした場合や、信頼している友人に支援を依頼したい場合などにも利用できるように制度を見直すとともに、活用事例を紹介するなどとして登録するメリットを市民に伝え、制度の利用を促進していくべきである。

登録の負担の大きさが、利用の障壁の一つであると考えられる。紙で登録する現在の方法では更新しづらいため、できるだけ多くの事項を決めてから登録したいと考えがちである。したがって、更新を前提として、例えば、かかりつけ医と持病のみをまず登録し、定期的に情報の追加・更新を促し、時間をかけて意思形成することを支援するツールにしていくべきである。マイナポータルを経由して自治体が電子申請を受け付ける「手続の検索・電子申請機能」を活用すれば、本人確認ができ、申請者情報が正確に入力される、申請内容をもとに自動的にリスト化できる、情報更新を促す連絡ができるなど、自治体の負担軽減にもつながる。

情報が登録されていても、タイムリーに伝達されなければ活用されない。照会を受けた場合にのみ情報を伝達する待ちの姿勢ではなく、例えば死亡届を受理したら、照会を待たずに、登録されている葬儀事業者や死後事務委任先に対して自治体から連絡する、といったプッシュ型の通知を行うべきである。

終活情報登録事業は、自分がどのように最期を迎えたいかを考え、高齢者等終身サポート事業者や葬儀事業者など、実際に支援を行う事業者と契約して対価を支払うといった行動も含む終活全体の一部に過ぎない。意思決定、事業者との契約、死後の契約遂行の確認など、上流から下流までの一連の終活支援策を充実させる必要がある。


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