コンサルティングサービス
経営コラム
経済・政策レポート
会社情報

経済・政策レポート

ビューポイント No.2025-003

地方経済に迫るトランプ政策の重圧 ― 国際公共財の空白が招く停滞、「三層構造」の政策で対応を ―

2025年04月16日 西岡慎一


トランプ政権が対外的な圧力をあからさまに強めている。米国は対外収支を国益のバロメーターと位置づけ、米国内への現金流入の最大化を図る政策を推進している。この背景には、自由貿易、基軸通貨、安全保障、環境といった「国際公共財」への過剰な負担から脱し、そのコストを他国にも分担させようとする姿勢がある。

これまで米国が他国の協力を得ながらも、国際公共財を供給してきたのは、自国の戦略的利益と結びついていたからにほかならない。これを否定し、収支のみに執着すると、世界経済の成長を低下させるとともに、その悪影響は米国自身にも跳ね返る可能性がある。保護主義への傾倒や軍事的関与の後退は、経済の非効率性やイノベーションの停滞を招き、地政学・金融など各方面のリスクを増大させる恐れがある。

このようなトランプ政権の政策は、日本経済の構造的な脆弱性を浮き彫りにする。日本の製造業は、機械産業を中心に米国市場への依存度が高く、高関税が恒常化すれば、さらなる生産拠点の海外移転が避けられない。対米貿易黒字の縮小を迫られるなかで、米国産の農産物が流入する可能性もあり、国内農業への影響が懸念される。さらに、防衛費の増加が財政を圧迫し、社会保障の削減を余儀なくされる可能性もある。こうした影響はとりわけ地方に集中し、都市部への人口流出を加速させる要因となりうる。

このような国際秩序の変容に対して、日本政府は受け身な対応ではなく、戦略的な国家ビジョンを持って臨む必要がある。具体的には、「三層構造」による政策対応が求められ、①米国に対しては中長期的な国益を見据えた外交交渉、②友好国とは多国間連携を通じた自由貿易体制の維持と強化、③国内では産業構造の変化と人材の再配置を地方創生に結びつける構造改革が必要となる。


(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)
経済・政策レポート
経済・政策レポート一覧

テーマ別

経済分析・政策提言

景気・相場展望

論文

スペシャルコラム

YouTube

調査部X(旧Twitter)

経済・政策情報
メールマガジン

レポートに関する
お問い合わせ