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適切なケアマネジメント手法の策定、普及推進に向けた調査研究事業

2025年04月17日 山内杏里彩齊木大辻本まりえ七澤安希子瀬名波雅子、竜石堂未来


*本事業は、令和6年度老人保健事業推進費等補助金 老人保健健康増進等事業として実施したものです。

1.事業の目的
 「ニッポン一億総活躍プラン」で令和7年度までと予定された「適切なケアマネジメント手法」に関する調査研究は、期別・疾患群別に想定される支援内容を整理することで、将来の生活予測におけるケアマネジャーの知識水準を確保するとともに、多職種連携の推進を目的としている。
 社会保障審議会介護給付費分科会「令和3年度介護報酬改定に関する審議報告」(令和2年12月23日)では「適切なケアマネジメント手法」に関して実効性が担保されるような方策について検討していくべきと言及され、令和6年度より介護支援専門員の法定研修に「適切なケアマネジメント手法」の内容が追加されること(老発0222号第2号、令和5年2月22日)となった。また、令和6年度に行われた「ケアマネジメントに係る諸課題に関する検討会」において、「ケアマネジメントに係る諸課題に関する検討会中間整理」(令和6年12月12日)が示され、ケアマネジメントの質の向上に向けた取組の一つとして適切なケアマネジメント手法を介護支援専門員だけでなく、医療等の関係職種や地方自治体等の関係者にも普及促進することの重要性について言及がされた。

 こういった背景を踏まえると、今後は初任段階を含め、より多くの介護支援専門員が本手法を実践で活用できるようなツールの整備に加え、多職種や保険者を巻き込んだ普及方策の検討が求められる。本調査研究事業は、「適切なケアマネジメント手法」の実践での活用に向け、介護支援専門員が実践で活用できるような(仮称)初学者向けチェックリスト(案)の成案化や疾患別ケアに関する冊子の作成を行う。また、これまでに作成してきた手法の拡充(基本ケア改訂版に向けた手法のブラッシュアップ、実践で活用できるデータセットの検討など)を行うとともに、地域のケアマネジメントに関わる関係者(介護支援専門員、他の職種、保険者)向けの普及方策の検討及び検証、今後の方向性についての検討を目的として実施した。

2.事業の主な内容
(1) 全国で活用可能なツールの拡充
①はじめての「適切なケアマネジメント手法」実践ガイドの成案化・公開

 適切なケアマネジメント手法の活用イメージを持ち、適切なケアマネジメント手法の学習のきっかけとするためのエントリーツールとして作成した「はじめての「適切なケアマネジメント手法」実践ガイド」について、ツールの位置づけや名称の検討、項目内容や構成を修正し、成案化した。また、付属するツール類として活用のためのガイドを作成した。
はじめての「適切なケアマネジメント手法」実践ガイド 独居世帯編(Excel)
はじめての「適切なケアマネジメント手法」実践ガイド 高齢者のみ世帯編(Excel)
はじめての「適切なケアマネジメント手法」実践ガイド 活用のための説明書 考え方編(PDF)
はじめての「適切なケアマネジメント手法」実践ガイド 活用のための説明書 使い方編(PDF)

②「適切なケアマネジメント手法」の手引きその3の作成
 疾患別ケアに関連するツールとして、疾患別ケアの項目一覧、疾患別ケアの自己点検シート、「適切なケアマネジメント手法の手引き その3 ~疾患別ケアを学ぶ~」を作成した。
 疾患別ケアの項目一覧及び疾患別ケアの自己点検シートは、新しいカリキュラムでの法定研修が始まっていることや、期中であっても早めに公開した方が良いとの意見を踏まえ、12月に公開した。
 「適切なケアマネジメント手法の手引き その3 ~疾患別ケアについて学ぶ~」は疾患別ケアの各疾患の特徴やケアマネジメントにおいて留意すべき点、各項目に加え、基本ケアと疾患別ケアの関係性や多職種連携において疾患別ケアを活用した事例等を取りまとめた。
・「適切なケアマネジメント手法」概要版(項目一覧)は下記ページよりご覧いただけます。
 「適切なケアマネジメント手法」の項目一覧及び本編冊子
・「適切なケアマネジメント手法」自己点検シートは下記ページよりご覧いただけます。
 「適切なケアマネジメント手法」に関するその他の資料(事業成果物)
「適切なケアマネジメント手法」の手引きその3(PDF)

(2)「適切なケアマネジメント手法」の拡充
①参照した知見の改訂箇所の特定

 過去に「適切なケアマネジメント手法」の作成にあたって参照したテキスト・ガイドライン等の改訂箇所、令和2年度以降新たに公開されたガイドライン等において「適切なケアマネジメント手法」に反映すべき箇所を特定した。また、「適切なケアマネジメント手法」の今後のブラッシュアップの方針について検討した。

②事例に応じて着目すべき視点の検証
 適切なケアマネジメント手法の実践での活用を見据え、高齢者の特徴に応じて優先的に着目すべき「想定される支援内容」を示唆するための仕組みのバックデータとなるデータセットの作成を目指し、①レビュー素材となる事例の収集、②スペシャリストレビューを実施した。
 ①レビュー素材となる事例の収集では、全国の介護支援専門員より462件の事例を収集した。②スペシャリストレビューでは、31名のレビュワーにより160件の事例のレビューを実施し、結果を取りまとめた。スペシャリストレビューの結果を踏まえ、データセットとしての取りまとめ方や今後の活用方法について検討した。

(3) 他の職種・保険者への普及
 今後の「適切なケアマネジメント手法」の普及の検討材料とするため、各地域において多職種が参加して「適切なケアマネジメント手法」を活用している先行的な事例について調査した。

(4)今後に向けた検討
 「ニッポン一億総活躍プラン」において2026年度までの実施と予定された「適切なケアマネジメント手法」に関する調査研究事業について、10ヵ年計画の最終年度である2026年度に向け、本事業の到達すべき点などについて検討委員会、ワーキング・グループで議論した。

(5)検討委員会及びワーキング・グループにおける検討・確認
 有識者や関係団体等と厚生労働省で構成する検討委員会、ケアマネジメント実務に明るい有識者で構成するワーキング・グループを設置し、上記(1)~(4)の結果について共有および検討を行った。

3.事業の主要な成果
 令和6年度事業の主な成果は、①「はじめての「適切なケアマネジメント手法」実践ガイドの成案化・公開、②疾患別ケアに関するツールの作成・公開、③事例に応じて着目すべき視点の検証のデータセット作成に向けた検討である。

①はじめての「適切なケアマネジメント手法」実践ガイドの成案化・公開
 本事業では、令和5年度事業にて検証を実施した「はじめての「適切なケアマネジメント手法」実践ガイド」(検証実施時点では「(仮称)初学者向けチェックリスト(案)」としていたが、令和6年度事業の検討にて名称を変更)について、その名称や位置づけの再整理、成案化に向けた項目内容や実践ガイドの構成の修正を行った。加えて、公開時の説明ツールとして、「はじめての「適切なケアマネジメント手法」実践ガイド」活用のための説明書を作成した。

②疾患別ケアに関するツールの作成・公開
自己点検シートの作成・公開

 これまで基本ケアに関する公開してきた自己点検シートについて、適切なケアマネジメント手法の内容が法定研修のカリキュラムに導入されたことを踏まえ、疾患別ケアについても自己点検が行えるように、自己点検シートを作成し、公開した。

項目一覧(ページ分割版)の作成・公開
 実践現場での活用促進に向け、これまで基本ケアについて作成をしていた1ページに各項目の想定される支援内容とアセスメント・モニタリング項目を掲載した冊子形式の項目一覧を疾患別ケアについても作成し、公開した。

「適切なケアアマネジメント手法」の手引きその3の作成
 法定研修への適切なケアマネジメント手法の導入などにより基本ケアだけでなく疾患別ケアについても解説を求める声が増えていることを踏まえ、「適切なケアマネジメント手法」疾患別ケアの初学者にとって手に取りやすく、疾患別ケアの各項目の解説や基本ケアとの関係性、疾患別ケアを活用した多職種との連携事例の解説等を盛り込み、「「適切なケアマネジメント手法」の手引き」その1、その2の続編として、新たな小冊子「「適切なケアマネジメント手法」の手引きその3 ~疾患別ケアについて学ぶ~」を作成した。なお、本手引きのみを手に取った場合でも疾患別ケア以外の本手法に関して一定の理解を得られるような内容とした。

「適切なケアマネジメント手法」の手引きその3の表紙と目次


③事例の特徴に応じて着目すべき視点の検証
 事例の概要に応じて着目すべき「適切なケアマネジメント手法」の想定される支援内容を示唆するしくみの構築を目指したデータセットの作成及び大量のデータを整備する方法の確立に向け、①レビュー事例の収集、②事例レビュー検証の実施を行った。
 ワーキング・グループでの議論や検証に参加したレビュワーの意見を踏まえ、事例の概要情報に応じて着目すべき「適切なケアマネジメント手法」の想定される支援内容の項目番号やそれを選んだ理由を整理したデータセットの作成に向けて、レビュー事例収集や事例レビュー検証の実施における課題の整理やレビュー結果のアウトプットイメージの検討などを実施した。

レビュー結果のアウトプットイメージ



4.今後の課題
 これまでの成果も踏まえた検討の結果、検討の結果、今後本テーマが取り組むべき課題として(1)適切なケアマネジメント手法令和7年度改訂版の作成、(2)多職種協働による実践での手法の活用促進(①多職種間の共通言語としての活用促進、②自治体での手法の活用促進)、(3)介護支援専門員の業務への組み込みの促進、(4)適切なケアマネジメント手法の普及・活用状況の実態把握、(5)手法のメンテナンス体制も含めた長期的な体制等の検討、とそれぞれ抽出、整理した。

※詳細につきましては、下記の報告書本文をご参照ください。
適切なケアマネジメント手法の策定、普及推進に向けた調査研究事業 報告書(PDF)

別冊資料
「適切なケアマネジメント手法」の手引きその3(PDF)

<参考>
本手法に関連して厚生労働省から介護保険最新情報での情報提供も行われています。こちらもご参照ください。
適切なケアマネジメント手法の策定、普及推進(厚生労働省ウェブページ)


本件に関するお問い合わせ
創発戦略センター コンサルタント 山内 杏里彩
TEL: 080-9436-3638   E-mail: yamauchi.arisa@jri.co.jp
「適切なケアマネジメント手法」に関する連絡窓口 : 100860-care@ml.jri.co.jp
※メンバー間での共有のため、メーリングリストへ連絡いただけると助かります


※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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