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Economist Column No.2025-003

トランプ関税にわが国はどう対応すべきか

2025年04月03日 石川智久


■相互関税に踏み切ったトランプ政権
ついにトランプ政権は相互関税に踏み切った。当社ではトランプ関税が全て実施された場合、世界経済の成長率は0.7%押し下げられるとみている。当社はこれまで、2025年の世界経済の成長率について、好不況の判断の分かれ目と言われる3%をやや上回ると予想していたが、今回の関税引き上げにより、景気後退局面入りするリスクがかなり高まったと言えよう。

■関税戦争を回避しつつ、トランプ政権とディールを進める必要性
トランプ政権の関税策に対して、一部の国では報復関税を示唆する動きもみられる。国民感情に考慮してそのような強気の姿勢を取っているとみられるが、際限のない関税戦争は避けていくべきである。関税戦争は経済のブロック化を進めてしまい、世界経済の成長力を予想以上に大きく低下させるリスクがある。さらには関税戦争が実際の武力衝突にまでエスカレートする恐れも否定できない。TPP等の自由貿易を進めてきた日本としては、関税戦争が泥沼化しないように国際世論をリードすべきである。
また、わが国にとって米国は主要貿易国であるだけなく、同盟国でもあり、米国との友好関係の重要性は今後も変わらない。そうした観点で、トランプ政権とうまくディールしていくことも重要である。トランプ政権の経済政策のブレーンと言われているスティーブン・ミラン大統領経済諮問委員会(CEA)委員長は、過去公表したレポートなどで、米国陣営の安全保障の負担を同盟国に負わせることを提案している。こうしたことを踏まえると、わが国としては、近隣諸国を刺激しない形で日米の防衛関係を強化するなどの対応を通して、トランプ政権とディールしていくのも有力な選択肢であろう。トランプ政権に対して様々なカードを示して、全面的な衝突を回避しつつ、わが国の国益を守っていく努力を粘り強くしていくべきである。

■貿易相手国の多角化を急げ
一方で、米国が同盟国に対してすら厳しい対応に出る「米国第一主義の国」に変わってしまったことも事実である。わが国としてもこうした現実を直視して、貿易構造を極力多角化することで、米国の振る舞いがわが国経済に及ぼす影響を小さくしていく必要がある。価値観を共有する欧州・豪州等はもちろんのこと、存在感を高めているグローバルサウスとの連携も強化すべきであろう。地球儀を俯瞰した貿易体制の構築を急ぐべきである。
わが国には、米国と妥協点を模索しつつ、貿易関係の多角化を進めるという高度な経済・外交戦略が求められている。


※本資料は、情報提供を目的に作成されたものであり、何らかの取引を誘引することを目的としたものではありません。本資料は、作成日時点で弊社が一般に信頼出来ると思われる資料に基づいて作成されたものですが、情報の正確性・完全性を保証するものではありません。また、情報の内容は、経済情勢等の変化により変更されることがあります。本資料の情報に基づき起因してご閲覧者様及び第三者に損害が発生したとしても執筆者、執筆にあたっての取材先及び弊社は一切責任を負わないものとします。
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