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ビューポイント No.2024-044

現役世代の負担軽減に向けて ―税と社会保障の負担割合・役割分担の見直しが不可欠―

2025年03月28日 牧田健


近年現役世代の所得環境の改善を求める声が強まっている。この背景の一つに、既往円安を受けた食料価格の高騰があるが、より根本的には、高齢化に伴う現役世代の負担増加がある。

厚生労働省「国民生活基礎調査」によると、現役世代、とりわけ若年層で負担率が上昇している。社会保険料負担のある世帯における世帯主年齢階級別負担率をみると、累進税率が課せられている所得税では世代間で負担に差がある一方、一定の税率が適用されている住民税、社会保険料では世代間に差がなく、現在も料率が引き上げられている社会保障負担が若年層に重荷になっていることが窺える。厚生労働省の「所得再分配調査」をみても、2000 年代半ばと比べ、世帯主年齢階級 75 歳以上を除くすべての年齢階級で再分配係数が悪化している。40 歳以上は所得が増えないなかでの負担増により再分配所得が減少、29 歳以下では所得は増えているものの、単身世帯増による社会保障給付の減少により再分配率が悪化している。

わが国のジニ係数は、2000 年以降当初所得においては拡大傾向にあるものの、再分配所得では一貫して低位安定が続いている。しかし、わが国の高齢化を踏まえると、再分配が過剰になっている可能性がある。一方、わが国における再分配は、税よりも社会保険料によるところが大きく、高齢化が深刻化するなか、社会保険料に依存した再分配が、現役世代に大きな負担となっている。

こうした状況下、現役世代の負担軽減に向けて、社会保障関連費の増加抑制が必要であると同時に、社会保障と税の負担割合および役割分担を見直すことが欠かせない。社会保険料から所得税にシフトさせることで低所得者層の負担軽減を図ると同時に、消費税率引き上げにより国民全体に広く負担してもらう必要がある。また、高齢者には高額な金融資産を保有している世帯も多く、応能負担をより強化していくことも欠かせない。

従属人口比率が一段と上昇する 2030 年代前半以降、現役世代の税・社会保障負担は更なる上昇が避けられなくなってくる。歪んだ負担構造が行き詰まる前に、負担のあり方を見直し、持続可能な社会保障制度を再構築していかなければならない。


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