リサーチ・アイ No.2024-123
トランプ関税によるインド経済への直接影響は限定的― 内需主導型の経済構造、インドの対米協調姿勢、米国のIT重視スタンスが要因 ―
2025年03月17日 細井友洋
米国の関税政策を巡る先行き不透明感により、インドの株式市場が混乱。市場は2つの関税政策を懸念。第一に、個別品目(鉄鋼、アルミニウム、自動車、半導体、医薬品など)への25%関税。とくにインドの対米輸出第1位の医薬品への関税を警戒。第二に、相互関税。インドの対米関税率(12.1%)は米国の対印関税率(2.4%)を大きく上回るため、インドの対米輸出全体に高い関税が課される可能性。もっとも、トランプ関税による輸出減少を通じたインド経済への直接影響は、総じて限定的となる見込み。その理由は、以下の3点。
第一に、インドが内需主導型の経済構造であること。インドの輸出依存度(GDPに占める輸出の割合)はアジアのなかでも小。米国がインドの輸入品に対して上述の5品目に25%の関税を課し、その他の品目に12.1%の相互関税を課すと仮定すると、インドの対米輸出は約100億ドル減少。これはインドの実質GDPを▲0.3%ポイント押し下げるにとどまる規模。
第二に、インドの米国への協調姿勢。インドはすでに、貿易不均衡の改善に向け、関税引き下げに着手。また、2月の首脳会談では、インドは米国からエネルギーや防衛装備品の購入を増やすことで合意。米国がインドに相互関税を課すとしても、インド側の協調姿勢により、関税率の大幅な引き上げは回避される見込み。
第三に、米国のIT重視のスタンス。トランプ政権は、AI規制の緩和やデジタル課税の国際枠組みからの離脱表明など、ITビジネス活性化に着手。大統領を支える実業家イーロン・マスク氏の影響が大。こうしたIT重視の姿勢は、インドの対米IT・BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)輸出拡大を促し、関税による財輸出の減少を補うと予想。
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