リサーチ・フォーカス No.2024-068 世帯タイプ別に消費低迷の背景を探る ― 2000年水準を下回り続けている若年世帯、単身中高年世帯の消費 ― 2025年03月13日 小方尚子若年世帯や単身の中高年世帯の消費がすう勢的に減少している。2000 年以降の世帯員一人当たりの実質消費額をみると、世帯主が 35 歳未満の単身世帯および二人以上の世帯、世帯主が 35~59 歳の単身世帯の減少が大きい。この3タイプの世帯(消費低迷世帯)では、名目ベースでも 2024 年の水準が 2000 年を下回った。消費額変化の内訳をみると、世帯共通の動きとして、交際費をはじめとする選択的支出が減っている。さらに消費低迷世帯では、他の世帯以上に、①交通通信、②教養娯楽、③外食の落ち込みが大きい傾向がある。こうした分野の落ち込みの一部は、志向やライフスタイルの変化と捉えることができ、総じて「コスパ」を追求した結果、支出を抑える方向に消費が変化している。世帯タイプによって異なる消費減少の背景としては、①年功賃金カーブの是正や非正規雇用比率の上昇などを背景とした 35~59 歳単身世帯の所得の低迷、②60歳未満世帯全般の将来不安を背景とした消費性向の低下、③長く続いた低金利の下で膨らんだ 35 歳未満二人以上世帯の住宅ローン負担の増加、の3点が指摘できる。消費の回復に向けては、賃金上昇の恩恵を幅広い層に及ぼす取り組みを着実に進め、所得の低迷が続く世帯を世の賃上げ気運から取り残さないようにしていく必要がある。とくに、中高年層の現状は、若年層にとって将来のライフスタイルのイメージを形成するため、将来不安を是正する観点からも、賃金上昇の動きを中高年層にも広げることが欠かせない。また、住宅ローン返済負担の増加によって家計の健全性を損なうことがないよう、「金利のある世界」における住宅ローン利用に向けた金融リテラシーの向上を図っていくことも重要な課題である。(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)