リサーチ・アイ No.2024-120 中小組合の春闘賃上げ要求は高水準も、下振れ懸念 ― 中小企業の経営環境には依然厳しさ ― 2025年03月10日 藤本一輝2025年春闘における中小企業(組合員数300人未満)の賃上げ要求は+6.57%と、連合が事前に掲げた目標「+6%」を上回る水準に。もっとも、今後の経営側の回答は、組合側の要求から下振れる公算大。中小企業は大企業と比べて組合からの賃上げ要求に応えきれない傾向。妥結賃金が組合要求を前年並みに下回った場合、中小企業の賃上げ率は、100~299人で+5.20%、99人未満の企業で+4.66%。300人以上の大企業(+5.39%)を下回る計算に。中小企業の賃上げが大企業と比べて見劣りする背景は、収益環境の厳しさ。中小企業では、円安が原材料コストの上昇を通じて収益を下押ししやすいほか、コスト高を十分に価格転嫁できないケースも多い状況。日本商工会議所の調査によれば、2024年度の中小企業の賃上げの6割以上は、企業業績の改善を伴わない「防衛的な賃上げ」であり、賃上げの持続性に不透明感。中小企業の持続的な賃上げのためには、生産性の向上や適切な価格転嫁が不可欠。価格転嫁の進展には、企業間取引の適正化だけでなく、消費者の価格転嫁に対する理解も重要。消費者が値上げを受け入れやすくするため、企業は自社の商品・サービスの魅力を継続的に高めることが必要。加えて、余力のある大企業で一段と賃上げが進めば、消費者の購買力が押し上げられ、中小企業の価格転嫁が進めやすくなる側面も。(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)