リサーチ・アイ No.2024-112 原発建設を本格化させるインド ― 国民理解醸成や安全確保などが課題 ― 2025年03月03日 細井友洋インドは、2070年の温室効果ガス排出の「ネットゼロ」実現に向けて、原発の建設を本格化。2月に財務大臣が演説で、原発への民間投資を呼び込む法改正を表明。その背景には、核兵器不拡散条約(NPT)非加盟のインドに対し、米国からの技術移転や原子力資機材の輸出を可能とする環境が整備された点。米国はインドへの原発輸出促進を企図しており、トランプ政権も対印原子力協力を継続する方針。インド政府のシナリオは、2047年の総発電量に占める原子力の割合を現在の2.8%から11.8%へと米中欧並みに引き上げ。原発推進は、インド経済に大きく2つのプラス効果をもたらす公算。第一に、電力供給体制の強化による経済成長の安定化。インドでは、人口増加や都市化により電力需要が大幅に増加する見通し。インドは脱炭素化に向けた主力電源として太陽光発電と風力発電の導入を進めているものの、それらの発電量は天候に左右されるため供給が不足する懸念も。天候に左右されない原発増設は、電力供給の安定化に寄与。第二に、化石燃料の輸入減少による貿易赤字の縮小と為替の安定化。インドでは、原油や石炭の輸入増加に伴って、貿易赤字が拡大傾向。原発は、現在電力供給の大半を占める石炭火力発電を代替するとともに、電力供給の安定化を通じてガソリン車からEVへのシフトを後押しすることも期待され、化石燃料の輸入が減る可能性。貿易赤字縮小は、通貨安圧力を緩和し、インドルピーの安定化につながり、結果として輸入物価上昇によるインフレ加速や、資本流出のリスクを低減。ただし、原子力については、国民理解の醸成や安全確保の徹底、廃棄物の処理、核拡散リスクへの対処といった課題が存在。インド政府のシナリオどおりに導入が進むかは不透明。(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)