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ビューポイント No.2024-040

わが国労働市場改革の課題とスウェーデン流リスキリング政策の含意

2025年02月27日 山田久


労働供給がなお減少基調に転化していないにもかかわらず、労働力不足が深刻化している原因は、雇用のミスマッチと労働生産性の低迷に求められる。これは、既存の労働市場システムが労働の需給両面の環境変化に適合できなくなったため。政府は近年労働市場システムの抜本改革に取り組んでいるが、なお途半ばであり、改革の大きな方向性を政労使・産官学で共有し、継続的に取り組んでいくことが重要。

改革の大きな方向性は、日本流の就社型システムと欧米流のジョブ型システムのハイブリッドであり、より具体的には、1)職業別賃金相場や職業能力育成が有効に機能する外部労働市場の整備、2)外部労働市場と接続する形での内部労働市場の修正、3)労働法体系の見直し、の3つに取り組む必要。本レポートでは、「外部労働市場の整備」にフォーカスし、長期的・安定的に高い労働市場パフォーマンスを示してきたスウェーデンの最新事情を紹介したうえで、わが国で導入すべき具体策を検討。

スウェーデンでは2022 年、政府を巻き込む形で労使の間で40 年ぶりといわれる労働市場の大改革に着手。その大枠は、使用者に雇用調整の柔軟性と予見可能性を高める一方、労働者のスキル開発の全面的な支援強化を通じて雇用保障(キャリア保障)を高める、というもの。『Transition(転身) 』がキーワードで、その内容は現在わが国で注目されているリスキリングと本質的に通じるところ。このスウェーデン流リスキリング支援スキームは、①公的支援によるリスキリング支援対象の大幅拡大(在職者・非組合員への適用)、②労使連携で運営してきた非営利の再就職支援組織の積極活用(パーソナルアドバイザーの重視)、が両輪。

スウェーデンの取り組みを踏まえた、わが国で求められるリスキリング促進型・外部労働市場の整備政策は、1)職業別賃金相場の形成、2)労働市場のニーズを踏まえたキャリア支援サービス、3)教育訓練コストの公的負担拡充、4)産官学連携した職業能力育成プログラム、の4つが柱。鍵を握るのは2)3)の運営主体となる「日本版・転身支援組織」で、産業雇用安定センターが統括し、実際のサービスは民間ビジネスに積極的に委託するというかたちが考えられる。


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