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【日本総研 サステナビリティ・人的資本 情報開示状況調査(2024年度)】
人的資本編 第4回 必要な人材像の特定・開示動向

2025年02月10日 太田康尚國澤勇人、方山大地、髙橋千亜希、芦田章吾


1.はじめに
 日本総研では、人的資本情報の開示要請をふまえ、2023年に有価証券報告書における情報開示の状況について調査(以下、「前回調査」)を行ったが、新たに「日本総研 サステナビリティ・人的資本 情報開示状況調査(2024年度)」(以下「本調査」)として、2回目の調査を実施した。
 その背景と概要について第1回で述べ、第2回と3回では開示指標の実態について述べた。
 第4回となる本稿では、企業が必要とする人材像の開示に焦点を当て、その状況について解説する。

 第1回調査の背景・概要
 第2回指標・実績・目標の動向(前編)
 第3回指標・実績・目標の動向(後編)
 第4回必要な人材像の特定・開示動向<本稿>
 第5回開示対象範囲の考え方・人的資本投資の検討状況


2.調査の結果
 本稿では、「必要な人材像」の情報開示に関して下記3点を調査した。
①「必要な人材像」に関する情報開示の有無
②「必要な人材像」の開示がある場合、その人材像の定義および指標の情報開示の有無
③「必要な人材像」の開示がある場合、それはどのような属性の人材としているか

 ①「必要な人材像」 の開示を行った企業の実態

 調査の結果、本調査対像企業のうち74.7%が、人材育成方針として「必要な人材像」について明記していた。(図表1)
開示内容は、人材育成方針の中で重点的に育成すべき人材を特定し、詳細に説明しているケースもあれば、経営人材やDX人材など一般的な表現で複数記載しているケースもあった。いずれのケースであっても「必要な人材像」が特定されていれば開示ありと判定している。



企業価値向上のために「必要な人材像」の開示は、人材戦略とその進捗状況の説明における軸になると考えられ、約25%もの企業が開示していない実態は想定を上回る残念な結果であった。

 ②「必要な人材像」 についてその定義および指標の開示状況

 次に、「必要な人材像」について開示の質について確認した。人材の定義有無と指標の開示有無に着目して、4つのタイプに整理した。1社で複数人材像を開示する場合は、その人材像別に集計している。(図表2)
 タイプⅠ 関連指標の開示なし、人材像の定義なし
 タイプⅡ 関連指標の開示あり、人材像の定義なし
 タイプⅢ 関連指標の開示なし、人材像の定義あり
 タイプⅣ 関連指標の開示あり、人材像の定義あり



 タイプⅣは、「必要な人材像」を定義し説明したうえで、その人材の採用・育成の進捗などを示す指標を開示している望ましいケースである。逆に、人材像の定義がなく、その人材確保の進捗など関連指標の開示もないタイプⅠは、改善余地があると考えられる。

 ③「必要な人材像」 の属性について
 
 次に、「必要な人材像」の傾向を整理した。その結果、「高度専門人材」、「経営人材」、「リーダー人材」、「グローバル人材」、「DX人材」のカテゴリーが多い傾向にあった。いずれにも該当しない人材は「その他」として整理した。開示内容からどのカテゴリーに該当するか筆者らの判断で分類している。「その他」に分類した人材像の中には、「マーケティング~製販物流まで当社が目指す独自のビジネスモデル全体を深く理解したうえで、各人の専門分野を掘り下げ経営戦略実現に寄与する人材」というように企業が独自に定義した個性的なものもある。この事例は「その他」に分類しているが、好事例と認識している。また、「グローバル人材」に分類した事例にも、「新規開拓国・地域で人脈を構築し、ビジネスモデルをチューニングしながら市場を開拓できる熱意と柔軟性を持った視野の広いグローバル人材」というように具体的な人材像を示した事例があるなど、各カテゴリーにおいて好事例がある。したがって本調査は、一概にどのカテゴリーだと良いという整理ではない。(図表3)



 さらに個別に開示内容をみていくと、経営戦略・事業計画の実現に必要な「(企業名)型人材」と企業名を付した独自の人材像を定義し、その人材の必要能力、育成プログラム、育成状況など、一連の情報を開示した説得力ある好事例がある。こうした事例を参考に、継続的に開示品質の向上を図っていくことが望ましい。

3.おわりに
 「経営戦略と連動した人材戦略」を説明するためには「必要な人材像」の解像度を上げたうえで一連の説明を行うべきと考え、本調査を進めた。調査の結果、形式的な開示にとどまるケースがある一方で、企業価値創造ストーリーと整合した「必要な人材像」を具体的に示し、納得感のある内容となっている好事例も増えていることが確認できた。今後はさらに多くの企業において、ステークホルダーの関心事項に即した質の高い開示内容となっていくことが期待される。
 次回(第5回)は、難易度が高く開示が遅れている「グループ連結」と「人的資本投資効果」の開示動向について述べる。

以上

※記事は執筆者の個人的見解であり、日本総研の公式見解を示すものではありません。
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