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リサーチ・レポート No.2024-018

わが国の財政運営の先行きを試算する-中立的前提のもとで利払費や国債発行額が抱えるリスク-

2025年01月30日 河村小百合


2025年1月17日公表の内閣府の『中長期の経済財政に関する試算』においては、前年まで黒字化が見込まれていた2025年度の基礎的財政収支(PB)があっさりと赤字見通しに覆された。一方、先行きについては従前同様楽観的で、「経済成長すれば、国と地方の債務残高GDP比は2034年度には約173%にまで低下する」、「低成長にとどまるとしても債務残高GDP比はほぼ横ばいで推移する」との見通しが示された。他方、国際機関(OECD)によるわが国財政の先行きに対する見方は、対照的に厳しい。

そうした差が生じる理由は、内閣府試算の前提条件の設定にある。内閣府の場合、①潜在成長率を実力対比で高めに、②物価上昇は限定的にとどまると設定し、さらにケースによっては③長期金利が名目経済成長率や消費者物価上昇率を長期間にわたり下回る、という不自然な設定が行われている。

そこで本稿では、財務省公表の国債関係データを基に、市場主義経済体制のもとにある国として、理に適い過去の経験に沿う前提のもとで、わが国の先行きの利払費や国債発行額の試算を実施した。

わが国の場合、短・中期国債も多い国債の発行構造を映じ、既発債により利払費が確定している分は限定的で、年度を経るごとに今後の金利動向次第で利払費が変動する割合が増大する。全額10年債で発行すると仮定した場合の2033年度の利払費は、2.5%成長(物価2%)シナリオでは約25兆円、5.5%成長(物価5%)シナリオでは約49兆円に達する。これを全額1年債発行に切り替えたとしても、利払費の節減額は4兆円程度にとどまる。

他方、2033年度の国債発行額は、全額10年債発行の場合は約67兆円で済むのに対して、全額1年債の場合は約817兆円に膨張する。これは、わが国の財政運営が万一行き詰まった際の“財政資金ショート”の額に相当する。

高インフレシナリオのもとでは、確かに税収の高い伸びが期待できる一方で、国債以外の一般歳出も高インフレ見合いで増額しなければ、国民は生活に窮する。試算結果によれば、高インフレ下でも税収だけでは利払費とインフレ見合いの一般歳出を到底賄いきれないことが明らかになった。

財政運営の安定的な継続のためには、国の債務残高を減額に転じさせるべく、財政収支の均衡・黒字化を達成し、それを長期間維持する必要がある。そのための計画策定がわが国の財政運営上の喫緊の課題である。

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