リサーチ・アイ No.2024-097 マレーシアとシンガポールが共同経済特区を設立 ― 両国のシナジー効果でマレーシアへの直接投資に追い風 ― 2025年01月28日 森田一至マレーシア・シンガポール両政府は、国境を接するマレーシアのジョホール州南部に共同経済特区(JS-SEZ)を設立することで最終合意。両国の思惑は以下の通り。シンガポール側のメリットは、広大な土地や安価な労働力へのアクセス向上。シンガポールは狭い国土に多額の投資を受け入れた結果、過密状態となっており、データセンターなど今後の成長産業への新たな投資に必要な土地が不足。加えて、賃金も近隣諸国と比較して高水準にあり、投資コストが増大。シンガポールの約4倍の面積を有し、賃金水準も低いJS-SEZへの投資が、今後のシンガポール企業の成長を後押しすると期待。マレーシア側のメリットは、熟練労働者の雇用創出と、それに伴う高付加価値産業を中心とした投資の拡大。マレーシア政府は、多くの支援策を打ち出して産業高度化を図るも、高度化に不可欠な熟練労働者の不足が長年の課題。就労ビザの要件緩和、特別パスの配布、QRコードによる出入国認可など、JS-SEZでの国境往来の簡易化を進めることで、シンガポールからの人材受け入れを拡大させ、熟練労働者の確保や高付加価値産業の振興につなげたい考え。マレーシアでは近年、①対立が激しさを増す米中との中立性、②ASEANのビジネスハブであるシンガポールとの近接性、③自然災害の少なさ、などを背景に、データセンターを中心に外資企業の進出が拡大。JS-SEZの設立は、付加価値の高い直接投資をさらに促す見通し。(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)