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(コメント)日銀が政策金利を0.5%に引き上げ―メインシナリオはマイルドな利上げ継続ながら、トランプ政策次第では利上げ加速のリスクも―

2025年01月24日 石川智久


日銀は本日の日銀金融政策決定会合で政策金利を引き上げることを決定した。現行の 0.25%程度から 0.5%程度に引き上げられることとなり、17 年振りの水準となった。先行きも、GDP ギャップのプラス転換が見込まれるほか、今春闘でも5%前後の賃上げが予想され、日銀が目指すデフレからの完全脱却へ進むとみられる。そのため、今後も利上げ局面が続き、当社では、半年ごとに 0.25%のペースで利上げが実施されると予想している。

筆者は、金融市場に悪影響を与えないペースで緩やかに利上げをしていくことが望ましいと考えている。金利が低すぎれば、不測の事態に金融緩和を行う余地が少なくなり、何らかのきっかけ再び非伝統的な金融緩和に追い込まれるリスクがある。景気悪化への対応が最優先課題ではない状況下、異例の低金利環境から金利を上げていくことは金融政策の正常化の観点からも望ましい。

今後の物価動向及び金融政策について、留意すべきなのは、トランプ政権による経済政策を受けた円安の進行である。トランプ大統領は、関税の引き上げや大幅減税などインフレ促進的な政策を取ろうとしている。その場合、米国金利が現在の市場予想より上振れするリスクがある。昨今の為替相場で金利差の影響力が強いなか、米国の金利強含みは円安要因となる。当社では、日銀の利上げペースが緩やかにとどまる一方で、トランプ新政権の大規模減税や関税引き上げなどによる米国でのインフレ圧力の高まりを見越して、FRB は春先にも利下げを停止すると予想しており、そのため、日米金利差は小動きとなり、為替への影響も限定的となることをメインシナリオとしている。しかし、トランプ政権の関税・減税の状況次第では、米国での予想以上の物価上昇を受けて FRB がタカ派的な金融政策をとり、円安が加速するリスクがある。

わが国への影響についてみると、昨今の円安は、大企業や製造業にメリットがある一方、中小企業やサービス業には輸入インフレ等を通じて痛みを感じさせるものとなっている。また円安が株高につながりやすいなか、富裕層にはプラスとなる一方、株式を保有していない一般の人々にはあまり恩恵を及ぼさない。つまり円安は、国全体にメリットを与えるというより、社会の格差構造を加速させるものとなっている。

そのため、円安が進んだ場合は、日銀がさらなる円安や輸入インフレ阻止の観点から、利上げペースを加速させる可能性がある。トランプ大統領の経済政策は、日本の金融政策も左右する存在になっており、引き続き注意深く見ていく必要がある。

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