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RIM 環太平洋ビジネス情報 Vol.25,No.95

中国企業の海外展開の全体像 ―個別企業の財務データからみた産業別動向―

2025年01月24日 関辰一


中国企業は輸出と対外投資の双方において海外事業を積極的に展開しており、その動きは世界的に注目を集めている。しかし、個別企業の事例研究では、それぞれの産業の海外展開の動きについて定量的に議論することができない。また、中国の対外直接投資統計では、製造業全体の金額は公表されているものの、例えば世界的に注目されている自動車産業や鉄鋼業といった個別産業レベルの金額は公表されていない。

そこで、本稿では、マクロ経済統計と個別企業の財務データを組み合わせて、中国企業の海外展開の全体像を概観する。国内事業の状況、そして海外展開の時期の違いを切り口に、産業分野ごとの動きの特徴を分析する。

その結果、非金融上場企業の海外売上高の総売上高に占める割合(海外事業展開比率)は、海外売上高が大幅に増加している一方で、国内売上高が緩やかに増加していることから、2013年の7.1%から2023年に12.8%へ上昇している。とりわけ2023年の製造業の海外事業展開比率は、積極的な海外展開により20.5%に達していることが判明した。

また、海外展開が進んでいると広く認識されている鉄鋼業や繊維工業よりも、海外展開がさらに進んでいる産業分野が多く存在している。非金融上場企業を28の産業分野に分けてみると、情報通信機器・電子部品・デバイス、電気機械、自動車産業、化学工業、はん用・生産用・業務機械、非鉄金属、金属鉱業の七つが、鉄鋼業と繊維工業よりも海外売上高が大きく、かつ海外事業展開比率も高い。

とくに海外売上高が大きく、海外事業展開比率も高い産業分野は、自動車産業、電気機械、情報通信機器・電子部品・デバイス製造業の三つである。10年間の産業別海外売上高の増加額のランキングをみても、これらの産業分野がトップ3である。

国内売上高の伸び悩みへの対応から海外事業を拡大している産業分野は、自動車産業や鉄鋼業である。従来は内需型産業として位置付けられていた自動車産業が海外事業に本腰を入れ始めたことで、海外事業展開比率が急上昇している。

国内売上高が高水準の増加率を維持するなかで海外市場に挑戦している産業分野もある。代表的な分野は、電気機械と情報通信機器・電子部品・デバイス製造業である。この二つは、少なくとも10年前から海外事業展開比率が高かった。

非製造業では、小売業が国内市場の低迷を理由に海外展開を積極化している。学術・開発研究機関(医薬品等)は国内売上高が高い伸びとなるなか、海外売上高を大きく伸ばしている。

非製造業のうち海外売上高が大きく、10年間の海外売上高の増加額も大きいのは、建設業と卸売業である。海外事業展開比率が高いのは、金属鉱業である。この三つは国内売上高が高めの増加率を維持するなかで海外市場に挑戦しているほか、少なくとも10年前から海外事業展開比率が高かった。

もっとも、欧米先進国との通商摩擦の問題や新興国市場での需給バランス悪化の問題などが阻害要因となることから、今後、中国企業の海外展開は製造業を中心に大きく減速すると見込まれる。


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