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ビューポイント No.2024-036

賃上げの内実と2025 年春闘の課題 ~実質所得増に向けた改革プラン~

2025年01月17日 山田久


2024 年春季賃上げ率は33 年ぶりのバブル期並みを記録したが、その内実は当時とは大きく異なる。従来は各年齢階層で賃上げ率にさほど差がなかったが、今次局面では脱年功や若手登用の潮流のもと、若手・中堅層の賃金が増える一方、中高年層は伸び悩む。また、中小企業の賃上げ率は大手に劣り、業績が改善しないなか人材確保のために無理して賃上げを行っているケースも多い。労働分配率が中小企業で高止まり、大企業で大きく低下していることからすれば、大企業は中小企業の価格転嫁要請を積極的に受け入れることが求められる状況。

実質賃金の持続的な引き上げを実現するには、生産性の向上努力および労働分配率の適正化に加え、交易条件の改善にも取り組む必要。それには輸出の価格競争力の向上につながる産業構造転換に加え、化石燃料輸入を減らすエネルギー構造転換が求められる。実質賃金を直接コントロールすることはできないが、名目賃金の持続的引き上げに取り組めば、産業・エネルギー構造の転換を促し、生産性を高めると同時に交易条件を改善させ、結果として実質賃金の押し上げに貢献することが期待できる。

実質賃金の持続的上昇を伴う賃金・物価の好循環につながる望ましい春季賃上げ率は、「定期昇給分+望ましいインフレ率+生産性向上トレンド」で与えられ、現状では「5%程度」になる。賃金制度の個別化トレンドを踏まえれば、単なる賃上げ率のみならず賃上げ原資の配分ルールについても労使で話し合っていくことが重要。それを踏まえた2025 年春闘の基本的な方向性は、(1)大企業における2024 年並み賃上げ率の維持、(2)取引価格適正化による企業間での付加価値の再配分と中小企業賃上げ率の引き上げ、(3)女性の登用促進と平均賃金の引き上げ(男女賃金格差縮小)(4)賃金カーブの適正化と雇用延長による生涯賃金拡大、の4点。

加えて、公労使・産官学の連携を強めた新しい春闘の仕組みの構築にも乗り出す必要。連携強化の具体的な重点施策として、特定最低賃金制度の積極活用、および、エッセンシャル部門の賃上げ・生産性向上集中支援策、に取り組むべき。


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