ビューポイント No.2024-034 (コメント)大阪・関西万博に向けて―地方創生とレガシー創出の努力が重要― 2025年01月08日 石川智久本年は大阪・関西万博が開催される万博イヤーである。開幕まで残り 100 日を切り、これから準備のラストスパートとなるが、ぜひとも良いスタートを切ることを期待したい。とはいえ、万博は半年間のイベントであり、開催期間が長いという特徴がある。そのため、開催期間中にバージョンアップしていけるという点もメリットとして指摘できる。実際、過去の万博を見ると、前半よりも後半の方が来客数も多くなり、盛り上がりも増していった。例えば、1970 年の大阪万博も開催初日の来場者数は事前予想の半分程度であり、関係者は肝を冷やしたが、その後は口コミで良さが広がり、最終的には 6400 万人を超えることとなった。開催中にも参加者の声をうまく吸収して、ピークを最終日に迎えられるよう努力していくことが重要である。しかし、万博を一時的なお祭りで終わらせてはならない。日本経済や地域の活性化を促進するためのツールとすべきである。その観点から重要なことが 2 つある。1 つは、地方創生のイベントとすることである。東京ではなく、大阪・関西で開催される意義の一つはそこにある。今回の万博は、会場に観光客を囲い込むのではなく、万博をゲートウェイにして、そこから全国の観光地に誘客することが期待される。インバウンドについては、有名観光地でオーバーツーリズムが問題となっている一方、地方の観光地においてはコロナ前の観光客数を回復していない。万博と地方の観光地がうまく連携することで、こうした問題を解決していくことが望まれる。もう一つは、レガシーを創出することである。万博は、未来の技術のショーケースであることに加えて、SDGs や日本文化の発信を促進することも重要なコンセプトである。これらをうまく融合して新たな産業を作っていくことが大事である。特に大阪においては、万博後にカジノ付きリゾートである統合型リゾート(IR)が開業する。万博を契機に、大阪が世界に冠たる観光都市となる戦略を進めていく必要がある。1970 年万博で太陽の塔を製作した岡本太郎氏は、かつて著書等で大阪への期待を熱く語った。具体的には、①ここが世界の文化の中心になるのだという、巨大な魂を誇る、②大阪ナショナリズムになってはならない、③超近代的な現代感覚で打ち出していけば、大阪は世界の最も魅力的な文化都市の 1 つになる、といった趣旨のこと等を述べた。長年にわたり地盤沈下が指摘されていた大阪・関西経済にとって、万博は再成長の起爆剤となりうるイベントである。大阪・関西の復活には、岡本氏の言葉を真摯に受け止め、上述の課題にしっかりと取り組んでいく必要があろう。(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)