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(コメント)2025年を歴史的観点で考える―日米ともに「80年サイクル」の歴史的転換点に―

2025年01月06日 石川智久


年頭にあたり、2025 年の世界経済について一考する。様々な政治・経済サイクルや昨今の情勢等をみると、2025 年は歴史的な構造転換点にあるといえる。

まず米国をみると、ジョージ・フリードマン等の学術関係者は「米国の政治体制は約 80 年サイクルで変化し、2025 年は新たなサイクルに入る」と指摘している。具体的には、第一期が独立戦争(1775 年~1783 年)から南北戦争(1861~1865 年)、第二期が南北戦争から第二次世界大戦の終わり(1945 年)、そして第二次世界大戦が終わってから 80 年間が経過する 2025 年頃に第三期が終わる、という見解である。

実際、トランプ次期大統領の政策を見ると、①関税強化策は 1930 年関税法(スムート・ホーリー関税法)を、②海外諸国や国際機関との非協力的姿勢は、モンロー主義に基づく米国の国際連盟不参加を、③移民の強制送還や国境への壁の建設は 20世紀初頭の日本人移民排斥運動を、それぞれ彷彿とさせる。これらは、米国がニューデール政策以前の立ち居振る舞いへと、歴史の歯車を逆回転させる大きな歴史的転換を予感させるものである。さらに、米国第一主義ではないバイデン政権ですら、今般、経済合理性を無視して日本企業による米国企業の買収を阻止した。こうしたことから、2025 年は米国が保護主義・孤立主義に本格的に移行する年として歴史的に捉えられる可能性がある。

米国の変化以外にも世界的な構造変化は多くある。一つは、中国のデフレが長期化する兆しである。その余波である中国のデフレ輸出は簡単に止められるものではなく、これが世界中の製造業にとって重石となることが懸念される。また、世界最大の人口大国となったインド経済の存在感が一層高まることが予想される。未来のフロンティアと言われているアフリカ諸国は、今後、コロナ前よりも成長率を高めると予想されているほか、21 世紀を通じて人口が増加するとみられており、世界経済のなかで一層注目を集める存在となる可能性がある。2025 年は第三世界の集結を示したアジア・アフリカ会議(バンドン会議<1955 年>)から 70 年のメモリアルイヤーでもあり、インドなどのグローバルサウスの影響力が高まる年となろう。

日本に目を転じても、大きな変化がある。注目すべき変化は団塊の世代全員が後期高齢者入りすること、いわゆる 2025 年問題である。年金・医療・介護のニーズが高まることは避けがたく、社会保障制度改革を断行できるかが今後の日本の経済・社会の帰趨を決めると言っても過言ではないだろう。

また、団塊の世代が 75 歳を超えることは、政治にも影響を及ぼす。衆議院選挙の投票率(2021 年)をみると、70~74 歳が一番高く、75 歳を超えると低下していく。80 歳以上になると 40~49 歳よりも低い。昨年の総選挙では現役世代の声に耳を傾けた政党が躍進したが、今後はその傾向が強まる可能性がある。65 歳以上人口の総人口に占める割合が今後 10 年間で3%程度しか伸びないと見られるなか、こうした年代ごとの投票行動の変化は選挙に大きな影響があるとみられる。つまり、2025年以降、政治面の地殻変動が起きやすくなることにも留意が必要である。

明治維新から終戦までが約 80 年であるが、2025 年は戦後 80 年である。その意味では、様々な戦後体制を見直すタイミングにあるともいえる。国家 100 年の計で本年を日本の統治機構や経済体制を考える年とすべきである。

世界も日本もこのように見ると、大きな構造変化の最中にある事は間違いない。日本の政府・企業・個人は、歴史をきちんと学んだうえで、世界の情勢を見極めて最適な選択を行っていく必要がある。

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