JRIレビュー Vol.1,No.119 アメリカ経済見通し 2024年12月25日 立石宗一郎足元のアメリカ経済は、内需を中心に堅調に推移している。良好な雇用・所得環境を背景に個人消費が増加しているほか、世界的な生成AI需要の拡大を受けてハイテク産業の設備投資が活発化していることが主たる要因である。今後のアメリカ景気は、トランプ次期政権が打ち出す政策を受けて、不安定化する見通しである。実質GDP成長率は2025年に+1.9%へ減速した後、2026年には+2.5%へ高まる見込みである。2025年後半にかけて、既往の利上げによる金融環境の引き締まりが家計の消費活動や企業の設備投資を抑制するほか、対中関税引き上げなどによる物価高が個人消費を下押しすることで、景気は減速すると見込む。2026年には、大規模減税が実施され、関税による負の影響が相殺されるかたちで、成長率は高まると予想する。インフレ圧力は再び高まる見通しである。トランプ氏による関税政策が輸入価格を引き上げるほか、大規模減税などの需要刺激策を受けたディマンドプル・インフレも再燃する見込みである。これにより、インフレ率は3%前後で高止まりすると予想している。インフレ再燃を受けて、FRBは2025年春にも利下げを停止すると見込んでいる。政策金利は、2026年末にかけて4%台と中立金利を上回る水準で据え置かれる見通しである。当面の景気下振れリスクとしても、アメリカ政府の政策動向が挙げられる。メインシナリオでは織り込んでいない政策、財政の悪化、移民排斥などが景気を悪化させうる。通商政策の面では、多くの国・地域を対象に関税を引き上げる「ユニバーサル・ベースライン関税」の実施が物価高を通じて景気を大きく下押しする可能性が高い。加えて、財政赤字の拡大で、財政の持続性を巡る懸念が高まれば、金利が急騰する恐れもある。さらに、アメリカに居住する不法移民を強制的に送還するような事態となれば、人口減を通じて、構造的な潜在成長率の低下や物価上昇を招く可能性がある。(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)