リサーチ・アイ No.2024-084 経済急減速にもかかわらず、利下げが困難なインド ― 資本流出などによるルピー安加速が懸念 ― 2024年12月24日 細井友洋インドの景気が減速。7~9月期のインドの実質GDP成長率は、前年同期比+5.4%と前期(+6.7%)から低下。これは、インド準備銀行(中央銀行)のダス前総裁が9月に示した潜在成長率7.5%を大きく下回る水準。12月に就任したばかりのマルホトラ新総裁は景気浮揚を目的に来年2月にも利下げに転じるとの見方が一部にあるものの、市場では利下げは見送られるとの予想が大勢。1年物OISは6.5%を超え、市場は今後1年間で利下げの可能性が低いことを織り込んでいる状況。利下げを阻む一因は、ルピー安の加速。インド景気の悪化を受け、株式市場への資本流入が一転して流出に転じたことや、米国の金利高止まり観測が要因。インド準備銀行は、ルピー安の進行を食い止めるため、断続的に為替介入を実施。その結果、外貨準備高は、9月末のピーク時から約500億ドル減少。その規模は、1カ月当たりの平均輸入額に相当するほどの大きさ。為替介入には限界があることから、インド準備銀行は通貨安が続けば、当面、利下げを見送る可能性大。インド準備銀行は、コロナ禍の時期を除けば、通貨安時には利上げを実施する傾向。トランプ第一次政権時の2018年にも、市場の不透明感の高まりがインドルピーを下押しし、利下げを阻む展開に。さらに、現在の政策金利は、テーラールールによる推計値と大きく乖離しておらず、利下げ余地は小。今後、仮に通貨安が急速に進行してインフレが大きく高進する場合、利上げを迫られる恐れも。(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)