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リサーチ・レポート No.2024-017

量的緩和と中央銀行の財務悪化が国家の財政運営に及ぼす影響-英予算責任庁の分析とわが国への示唆-

2024年12月20日 河村小百合


海外では、コロナ危機直後から急激な金融引き締め策を講じてきた影響で、主要中央銀行の多くが現在、赤字や債務超過状態に陥っている。イギリスにでは、独立財政機関である予算責任庁(OBR)が、中央銀行の財務悪化というこの問題を繰り返しとり上げ、イングランド銀行(BOE)の足許の財務状況という観点にとどまらず、国家の財政運営全体に対する長期的な影響という、より幅広い観点からの分析も行い、その結果を明らかにしている。

同国では BOE が量的緩和(QE)に着手した当初から、正常化局面におけるリスク管理の在り方について、政府(財務省)とともに予め検討して必要な枠組みを構築し、日銀よりははるかに抑制的な QE を実施してきた。現在、BOE は計画的な正常化(量的引き締め=QT)に着々と取り組んでおり、2022 年 3 月の着手以来、すでに資産の 15%を縮減している。

BOE が QE を実施してきた資産買い入れファシリティ(APF)からは、利益を計上していた 2022 年 10 月までの間、財務省に累積で 1,239 億ポンド(約 23.5 兆円相当)の国庫納付が行われてきた。ところがその後、APF は赤字に転じ、現在では財務省から APF に対して損失補填が実施されている。OBR の最新の分析によれば、こうした APF のライフタイム(通期)・コストは実に 1,157 億ポンド(約 22 兆円相当)に達すると見込まれている。

また OBR は、政府と BOE を合わせた統合政府ベースでのリスク分析も行っており、大規模な QE 実施後には、統合ベースの負債の満期が極端に短期化された結果、金利リスクが増大したと警鐘を鳴らしている。

一方、わが国では、金融政策の正常化や財政再建への取り組みは遅れており、統合政府ベースでは負債の満期が極端な短期化状態に陥り、極めて大きな金利リスクを抱えている。不測の事態を回避するためには、金融政策の正常化に日銀、政府が足並みを揃え取り組むとともに、本腰を入れた財政再建に一刻も早く着手して、毎年度の国債発行額を減額していくことが求められる。

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