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リサーチ・フォーカス No.2024-055

EUにおけるGovTechエコシステム形成に向けた動向

2024年12月18日 野村敦子


EU では、「デジタル単一市場(DSM)」の実現を目指し、2010 年代よりデジタル戦略に取り組んでいる。DSM の実現にあたっては、民間部門のみならず、公共部門の DX(デジタル・トランスフォーメーション)が重要な課題の一つである。EU 市民・企業の誰もが国境を越えて行政手続きや公共サービスを利用可能とするために、デジタルガバメントの構築、ならびに、技術・インフラ面や法律・制度面の環境整備が推進されており、その技術的な基盤として
GovTech の振興にも力を注いでいる。

GovTech は Government Technology の略で、デジタル技術を活用して業務の効率化やサービスの改善、市民参加の促進など、公共部門にイノベーションを起こそうとする取り組みである。欧州委員会では、GovTech は FinTech などと同様に、革新的なスタートアップが中心的な役割を担うものと考えており、加盟国や民間企業・非営利団体などと協力して GovTech 関連のイニシアチブやプロジェクトを立ち上げている。

2023 年より取り組んでいるプロジェクトには、GovTech Connect と GovTech4All がある。GovTech Connect は、GovTech に関わる人材や組織、情報が集積するプラットフォームを構築し、公共部門と技術専門家等との間の知識や理解のギャップを埋め、協働を促進させようというものである。GovTech4All は、複数の国・組織がデジタル公共サービスの開発・実証実験に協働で取り組むプロジェクトである。これらを通じて、GovTech エコシステムの形成や中小企業・スタートアップを育成し、行政 DX を一段と加速させるとともに、イノベーションの創出や新市場の開拓を目指している。

EU の取り組みの特徴として、以下の取り組みを段階的かつ構造的に進めてきたことが指摘できる。すなわち、
GovTech 推進に必要な①人材・組織の接点の明確化、②一元的な情報の収集と提供、③協働のノウハウを習得・実践する場の設定、④そこで得られた成果の横展開や課題・障害の解消に向けたルールの明確化、が図られている。

EU の取り組みから、学ぶべき点は多い。とくに、共有・堅持すべきビジョンやフレームワーク、ルールが徹底され、関連施策・組織間で有機的な連携が図られている点、事前の調査・研究ならびに事後の成果や課題の把握・分析が適切に行われている点、共通プラットフォームなどにより情報や人材・組織の所在の可視化やネットワーク化が促進されている点、相互運用性(技術のみならず法規制、組織、情報・データの意味に関しても)が前提とされている点などは、わが国も取り入れるべき視点である。

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