JRIレビュー Vol.4,No.122 人口の東京一極集中の実相と地方創生のあるべき姿 2024年12月06日 藤波匠東京圏の転入超過数は、コロナ禍の影響を受け大きく減少した状況から脱し、緩やかな増加傾向にある。しかし、転入する人口の年齢構成や転出元をみると、コロナ禍前とは異なる状況がみてとれる。18 ~ 29歳の新卒世代に限れば、2023年の東京圏の転入超過数は、すでにコロナ禍前の状況を上回る。これは、東京圏に拠点を構える企業による新卒世代に対する採用意欲の強さを反映したものとみられる。また、東京圏に流入する人口の供給地として、地方大都市圏の割合が高まっている。地方大都市圏を除く地方圏で、若い世代の人口減少などにより人口供給力に陰りが生じ始めていることが一因である。IT人材など、高度人材を大都市間で奪い合う構図が鮮明となっており、そのなかで東京圏の吸引力が勝っているとみられる。男性に比べて女性の方が東京圏の転入超過数が多い状況は不変であるが、足元でその差の縮小がみられる。この背景には、地方の若年女性人口の減少や東京圏における医療,福祉分野の雇用拡大の一服感、さらには情報通信業界の継続的な雇用拡大など、求人職種や産業構造の変化がある。女性の流出が大きな課題となっていた地方圏にとっては、東京圏での求人職種の変化などから女性が地域にとどまる可能性の高まりは歓迎すべき動きと言える。一方で、わが国の経済成長を促す観点では、女性の理系人材やIT人材を育成することが、喫緊の課題である。この機をとらえて、地域経済の発展やジェンダーギャップ解消の面からも、地方においてキャリア教育の充実や大学の学科再編などを通じて理系を志望する女性を増やすことが望まれる。地方において、女性理系人材の受け皿をもうけないまま育成ばかりを進めれば、東京圏への女性の流出が再び加速しかねない。わが国の経済発展と高度人材の地域定着を両立するためには、各地において、理系人材やIT人材の受け皿となる雇用の場を充実させていくことが必要である。7割以上のIT人材をいわゆる大都市のITベンダーやそれに類する企業が抱え込んでいる現状を改め、地方に拠点を構える企業においても、積極的に理系人材を採用することで、女性の地域定着を促すとともに、各企業の内発的なDXや研究開発を促進して地域経済を活性化していくことが必要である。(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)