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ビューポイント No.2024-026

学生の「年収の壁」は引き上げではなく解消を ― 特定扶養親族の控除額を次第に減らす制度設計に ―

2024年12月04日 藤本一輝


国民民主党は「103 万円の壁」解消を目指し、(ア)基礎控除等の引き上げに加えて、(イ)主に学生アルバイトが当てはまる特定扶養親族の認定基準の引き上げを与党に要求している。年末の税制改正に向けて、これら政策の具体化に向けた議論が行われている。本稿は、まさに「壁」となっている(イ)に焦点をあて、現状を整理し、あるべき姿を検討した。

学生アルバイトにとって年収103 万円が就業調整の目安になっているのは、年収が103 万円を超えると、税制上の扶養から外れ、親(扶養者)の税負担が一挙に増加することがもっぱらの要因である。所得税率10%とすると住民税とあわせて10.8 万円の負担増となる。

「103 万円の壁」が引き上げられれば、学生アルバイトは、健康保険料の負担増が生じる130万円までは、世帯(自らと親の合算)の手取り額の急減が生じることなく働くことができる。これにより12 万人分の労働供給増加につながる可能性がある。

ただし、特定扶養親族の認定基準を現在の仕組みのまま単に引き上げるだけでは、引き上げ後の年収基準付近で新たな「壁」が生じる。これにより、現在その年収付近で働いている人など、新たな労働供給の歪みを生じさせる恐れがある。

そこで求められるのは、学生アルバイトの年収増加とともに親の控除額を漸減させるような制度設計である。それにより、世帯の手取り額が大きく減少する「壁」は解消される。

このように税制を変更しても、社会保険に起因する「壁」は残る。「年収の壁」による労働供給の抑制を解消すべく、社会保険制度における扶養の在り方の見直しも含めた、抜本的な改革が必要である。


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