ビューポイント No.2024-025 円安だけでは変わらない内外直接投資―外需獲得には製造業の基盤整備とサービス業強化が不可欠― 2024年12月02日 牧田健円安は本来、対外直接投資の抑制、対内直接投資の増加を通じて、生産拠点の国内回帰を促すと同時に、新たな資本により経営が刷新されることで、わが国経済の成長力強化に資するはずである。しかし、現状、大幅な円安が進行しているにもかかわらず、対内対外直接投資に目立った変化は生じていない。近年、対外直接投資が増加しているのは非製造業であり、製造業の増加は抑制されている。しかし、製造業の海外設備投資比率が低下しても、国内の生産能力増加につながっておらず、わが国企業の国際競争力が低下している可能性が示唆される。非製造業では、深刻な景気悪化に直面している中国向け以外では軒並み増加しており、米国はじめ成長期待が高いところに積極的な直接投資が行われている。対外直接投資が引き続き拡大している背景には、①貿易構造の大幅な変化、②人口減少を受けた成長期待の低下、③内外投資収益率格差が指摘可能。トランプ前米大統領の再登板による保護主義圧力の一段の強まりやわが国の人口減少高齢化の進行を踏まえると、円安だけでは直接投資動向に変化は生じない可能性が高い。わが国経済の底上げに向けては、円安に過度に依存することなく、成長期待を高める施策を打ち出していく必要がある。まず、非価格競争力のある製品の輸出拡大、米中対立の先鋭化を受けた「経済安全保障」に関わる産業の国内回帰を目指し、エネルギーコスト引き下げ、外国人労働者の受け入れ環境整備、資本装備率引き上げに向けた大規模集約化等、製造業の基盤整備を図っていく必要がある。加えて、世界的にサービス貿易のウエイトが高まるなか、サービス輸出の強化に向け、インバウンドのみならず、ゲーム・アニメなどのコンテンンツ産業を強化していく必要がある。そのためには、規制改革や多様性の受容等を通じて「イノベーション創出」に資する環境の整備が不可欠である。直接投資収益の国内への還流をより強化していくことも欠かせない。従業員が株高メリットを享受できる制度導入のほか、研究開発費の充実に向けた税制面での支援のほか、海外技術者の招聘、大学との連携強化などの取り組みも必要である。(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)