新興国で急速に進むデジタル化は、中国 IT 企業抜きに語ることができない。ASEAN が端的な例である。中国 IT 企業は ASEAN で、スマートフォンや電子商取引といった消費者向け事業から、海底ケーブルや 5G などのデジタルインフラ構築事業まで、広範な分野で深くかかわってきた。現地政府などと提携し、デジタル人材の育成にも関与している。これが可能なのは、中国 IT 企業が価格や品質面で高い国際競争力、さらには豊富な資金力を有するためである。
中国 IT 企業の積極進出に対し、受け入れ側の ASEAN の消費者は総じて好意的である。各国政府も、経済発展にデジタル技術の活用が不可欠と認識し、国による温度差はあるものの総じて歓迎している。米欧の人権団体などは、中国が監視システムの輸出などを通じて権威主義を広げていると警戒しているものの、ASEAN 諸国の政府は犯罪や反政府活動を抑止する効果をより重視している。そもそもこれらの国の多くは、もとより権威主義ないしそれに近い政治体制である。