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ビューポイント No.2024-022

デジタル領域で新興国への攻勢を強める中国―ASEANを例にー

2024年11月21日 岩崎薫里


新興国で急速に進むデジタル化は、中国 IT 企業抜きに語ることができない。ASEAN が端的な例である。中国 IT 企業は ASEAN で、スマートフォンや電子商取引といった消費者向け事業から、海底ケーブルや 5G などのデジタルインフラ構築事業まで、広範な分野で深くかかわってきた。現地政府などと提携し、デジタル人材の育成にも関与している。これが可能なのは、中国 IT 企業が価格や品質面で高い国際競争力、さらには豊富な資金力を有するためである。

中国 IT 企業の積極進出に対し、受け入れ側の ASEAN の消費者は総じて好意的である。各国政府も、経済発展にデジタル技術の活用が不可欠と認識し、国による温度差はあるものの総じて歓迎している。米欧の人権団体などは、中国が監視システムの輸出などを通じて権威主義を広げていると警戒しているものの、ASEAN 諸国の政府は犯罪や反政府活動を抑止する効果をより重視している。そもそもこれらの国の多くは、もとより権威主義ないしそれに近い政治体制である。

アメリカでは第二次トランプ政権が一段と対中強硬姿勢を強めると予想されるなか、中国政府は対抗措置の一つとして、これまで民間企業の自主的な行動に任せがちであったデジタル分野において、より主体的・組織的に関与することが考えられる。そうした動きがトランプ政権の中国への警戒感を増幅させ、米中対立がさらに激化する、という悪循環につながりかねない。

こうした状況下、日本が優先すべきは ASEAN の社会課題の解消に主体的にかかわることである。これにはデジタル技術の導入にとどまらず、ほかの技術との組み合わせやサプライチェーンの見直しといった、より広範で地道な取り組みが求められる。これに成功すれば、この地域の経済発展と社会的豊かさの実現に貢献することはもとより、グローバルな観点では中国勢のカウンターバランスの役割を果たすことにもなろう。

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