AO プリンシプルは、原則の趣旨に沿った対応を促す「原則主義」である点が特徴。アセットオーナーは、そうした原則を受け入れるか否かを判断し、受け入れない場合は、その理由を説明する「コンプライ・オア・エクスプレイン」形式を採用。
AO プリンシプル策定によって、アセットオーナーの行動変容が期待される一方、実効性に係る課題も存在。そうした課題及び今後求められる対応は、以下の3点。
① アセットオーナーの意識改革・態勢整備 アセットオーナーのなかには、運用リターンを重視し、体制整備やリスク管理の重要性を十分に認識できていない機関も存在。当局として、AO プリンシプルの主旨やその必要性について、アセットオーナーと対話を重ね、意識改革を促す必要あり。また、体制整備のなかでは、「適切な利益相反管理」が重要。利益相反管理に係るポリシーの設定を求めるなど、実効性を高めることが有効。
② アセットオーナーの機能強化に向けた外部知見の活用 運用業務や実績の「見える化」等について、外部知見の活用を促す施策が重要。例えば、アセットオーナーから資産運用業務を包括的に受託するOCIO ビジネスへの国内金融機関や海外企業の参入を促進し、資産運用業務を委託できる環境を作ることが有効。また、運用状況の「見える化」については、外部組織による評価やランキングの活用が一つの解決策。
③ 「コンプライ・オア・エクスプレイン」の実効性検証 英国では、2020 年のスチュワードシップ・コード改訂時に、「アプライ・アンド・エクスプレイン(適用し、説明する)」という形式に変更するなど、「原則主義」を見直す動きも。わが国においても、AO プリンシプルの受け入れが想定通り広がらないリスクを想定し、英国の取り組み等を研究するべき。