リサーチ・フォーカス No.2024-040 好機を迎えたわが国の森林・林業再生 ―地方創生・GX・防災も視野に課題解決を加速すべき― 2024年10月23日 石川智久、佐藤浩介多くの中山間地域を抱えるわが国にとって、森林・林業再生は地方創生につながる重要政策である。また、GX(グリーントランスフォーメーション)や防災・減災の観点からも着目され、幅広い観点から関心が高まっている。わが国林業の産出額は約6,000 億円と、それほど大きい産業ではない。もっとも、産業が少ない中山間地域にとっては、林業生産額は同地域のGRP 対比で1.1%と無視できない規模になる。また、木材・木製品製造業の製造品出荷額は2.7 兆円、住宅市場では一戸建て住宅の90%が木造であり、関連市場まで含めると幅広い裾野を持つ産業といえる。産業面以外でも森林は、①国土面積の7 割を占める、②防災などの面で国民生活に資する、③脱炭素対応で不可欠な存在である、などの重要性を持ち、林野庁では自然環境保全などの価値が年間70 兆円に上ると試算している。こうしたなか、政府も森林・林業再生に向けて、森林環境税と森林環境譲与税を導入するなどの施策を講じている。しかし、わが国林業には多くの課題が残されている。大括りにすると、川上では、①森林保有者と森林経営者の分離がもたらす問題、②効率性の低さ、③担い手不足、④投資資金不足、⑤植林樹木のアンバランス。川下では、①高付加価値化の遅れ、②建材用途の狭さ、③輸出拡大の遅れ、などが指摘できる。これらの課題に対し、川上では、①森林保有者と森林経営者をつなぐ森林経営管理制度の強化、②林業DX などを活用した効率化、③人材育成強化と交流人口増加による担い手確保、④森林REIT の導入や森林環境税等の活用、⑤植林のバランス改善、などによる対処が求められる。また、川下では①高付加価値化の推進、②高層建築への活用、③競争的資金の活用、④海外市場開拓等による輸出振興、などが不可欠。特に、輸出の政府目標額は中山間地域のGRP の0.4%に相当し、その達成は同地域の活性化に資する。森林・林業再生は、森林資源が充実し、川上・川下それぞれの対策を行い得る今を好機と捉え、上記対策を進め、地方創生、GX 加速、防災・減災に資する森林・林業再生を目指す必要がある。(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)