コンサルティングサービス
経営コラム
経済・政策レポート
会社情報

経済・政策レポート

ビューポイント No.2024-17

(コメント)衆院選解散について ~与野党の公約等からみる経済政策の論点~

2024年10月09日 石川智久


本日、衆議院が解散される。石破首相の所信表明が終わり、野党も選挙に向けた公約を公表し始めるなか、経済政策の論点について筆者の考えを述べたい。

1.財政再建:財政再建について与野党ともに道筋が示されていないことが懸念される。また、石破氏の総裁選公約や立憲民主党の公約をみると、教育等の無償化等が盛り込まれている。政策として教育に注力することには意義があるものの、野放図な無償化はバラマキに繋がる可能性がある。財政再建に向けて、どのような仕組みで放漫化に歯止めを掛けるのかを明示する必要がある。また与野党ともに規制緩和について十分に言及されていない。「財政支出無き成長戦略」として、規制緩和についても議論を深めるべきである。

なお、金融政策について、立憲民主党は日銀の物価安定目標を2%から0%超に変更すべきとしているが、これは金融政策の大転換であることに加え、高度に技術的なものであるため、本来であれば政治で決めるものではなく、経済学的な冷静な議論を行うべきである。選挙戦を通じて、目標変更の妥当性や日銀の独立性との関係について説明することが不可欠であろう。

2.税制:公約等では与野党ともに法人税の見直し・引上げを示唆している。もっとも、一つの税に絞って税率を過度に引き上げることは混乱や非効率を生み出す可能性がある。国民負担については、消費税、所得税、法人税の基幹3税を中心とし、法人・個人の別なく国民の間で極力公平に負担を分かち合うことが重要である。
また、金融所得課税については、議論を通じてその必要性を明確にしたうえで、導入する場合は金融市場への悪影響を最小化する観点から、枠組みやスケジュールについて慎重な検討がなされるべきである。さらに、立憲民主党が提示している給付付き税額控除の導入の意義や問題点についても議論が進むことを期待したい。

3.社会保障:給付については全世代に配慮する傾向が与野党ともにみられるものの、現役世代の負担軽減については与野党ともに踏み込み不足である。国民負担率の上昇が続くなか、割を食っている層の負担削減の在り方を検討し、「真の意味での全世代型社会保障」に向けた改革を進めるべきである。

4.最低賃金:与野党ともに最低賃金を1500 円以上にするとしている。賃金引上げは景気回復や格差是正のために重要であるが、大幅な賃上げには、それに見合う生産性向上や激変緩和措置等が求められる。工程表や産業別の対応策などついて議論すべきである。

5.地方創生:東京一極集中是正が求められるなか、ぜひとも推進すべき政策と考える。その際、重要なことは、地域の産業強化を通じて成し遂げるという視点である。政権は交付金等の当初予算ベース倍増を示唆しているが、これが単なるバラマキとならないよう、実効が上がる仕組みを考えるべきである。また、野党側も産業競争力向上に繋がる地方創生のアイデアを提案すべきであろう。

6.霞が関改革・防災省等:石破氏の公約の中では「中央省庁の再再編」が示されている。わが国の政策実行力低下の要因の一つとして、統治機構の疲弊や省庁間の連携不足も指摘できる。政策立案力向上に資する省庁再編を進めるべきである。また、「防災省」の創設が提言されている。防災への対応強化は重要であるものの、省庁新設にはコストがかかるほか、統治機構の複雑化にもつながる。省庁新設を決め打ちするのではなく、様々な選択肢を検討し、最適解を選択する必要があろう。また、霞が関の疲弊は、政府だけでなく野党側にも責任の一端があると考えられるなか、野党側も統治機構改革について考え方を示す必要があろう。

以上のような論点について真剣な議論が交わされるなかで、日本経済がデフレから完全脱却し、財政再建も同時に進められるような経済政策の道筋が見出されていくことを期待したい。


(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)
経済・政策レポート
経済・政策レポート一覧

テーマ別

経済分析・政策提言

景気・相場展望

論文

スペシャルコラム

YouTube

調査部X(旧Twitter)

経済・政策情報
メールマガジン

レポートに関する
お問い合わせ