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リサーチ・フォーカス No.2024-034

「好循環」実現でも、中高年の消費ゼロ成長 ― 求められる生産性の向上、教育・介護負担の軽減 ―

2024年09月25日 西岡慎一後藤俊平


わが国では、個人消費が伸び悩んでおり、なかでも40~50歳代の中高年世帯の消費意欲が弱い。さらに、今後、賃金・物価の上昇が定着し、「金利ある世界」が復活したとしても、中高年層の消費は抑制される可能性が高い。

試算によれば、経済全体の賃金が年3%、物価が2%上昇し、政策金利が2%に引き上げられた場合、実質消費の伸びは中高年世帯でゼロ%にとどまる。これは、若年世帯や有業の高齢世帯の伸びを下回り、年金に頼る無業の高齢世帯に次いで低い伸びとなる。中高年世帯の消費低迷が続く背景として、以下3点が挙げられる。

第1に、賃金調整の余地がなお大きい。中高年層の賃金水準は生産性見合いの水準よりも高く、とくに大企業でその傾向が強い。今後も、中高年層の実質賃金の伸びは若年層や高齢層に比べて弱いことが予想される。

第2に、金利上昇による利払い負担が大きい。現在の中高年世帯では、長期にわたる所得低迷で金融資産が十分に積み上がっていない一方、負債が大幅に増加している。金利が上昇した場合、利子収入の増加が利払いの増加でほぼ相殺され、消費の押し上げ効果は小さい。

第3に、将来不安が高まっている。たとえば、晩婚化や長寿化の影響で、子供の養育や親の介護のタイミングが後ろ倒しになっており、将来の費用負担の不確実性を高めている。配偶者の一方が非正規雇用である中高年世帯が多いことも、リスク分散が十分に効かない要因になっている。

中高年世帯の消費を活性化させるためには、生産性向上で賃金を上昇させるほか、将来不安を払拭させる必要がある。政府においては、リスキリングの支援を拡充するとともに、教育や介護を巡る負担軽減を図る取り組みが求められる。


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