リサーチ・アイ No.2024-055 零細企業の賃金は伸び悩み ― 生産性の低迷が背景、将来に向けた投資も限定的 ― 2024年09月20日 藤本一輝零細企業の賃上げは限定的。財務省「法人企業統計年報」によると、一人当たり人件費は、資本金が1千万円~10億円の中堅・中小企業で増加している一方、資本金が1千万円未満の零細企業では伸び悩み。零細企業が賃上げに踏み切れない背景には経営状況の厳しさ。零細企業では労働生産性(労働者一人当たり付加価値額)が低迷。アンケート調査でも、多くの零細企業が、賃上げできない理由として、「物価上昇によるコスト増」や「価格転嫁が困難」と回答。零細企業では、賃上げ原資の確保に向けた投資も限定的。同アンケート調査では、多くの零細企業が賃金引き上げの対策として、経費削減と回答した一方、設備導入等による生産性向上を挙げた企業は少数。零細企業の設備投資はキャッシュフローとの対比で低位で推移しており、中堅・中小企業を大きく下回る状況。消極的な投資姿勢が生産性の低迷につながるという悪循環に陥っている可能性あり。零細企業に従事する労働者は全体の21%を占めるだけに、零細企業の賃上げは「賃金・物価の好循環」を達成するためにも不可欠。賃上げを進めるためには、収益力や生産性の向上が急務。政府においては、適切な価格転嫁の促進や賃上げ・投資支援制度の活用を促す取り組みを一段と進めていくことが重要。(全文は上部の「PDFダウンロード」ボタンからご覧いただけます)